天使と悪魔の方程式 2【男主】 (ページ29)

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「アンタを憎めたらと思うよ
誰かを憎まなきゃ救われなかった

でも、裕人はアンタを憎まないと言った…兄貴達がそう望んでいないって言ったから

俺は兄貴に育ててもらったんだ
兄貴がいなかったら飢え死にしてた
それがあの薄汚え病院で見つけた時には、1人でトイレにも行けない有様だ」

「それで連れ出したのか」

「あぁ」

でもそれはこれからも続くんだろう
だけど、もうそれが終わったのは俺じゃない…裕人だ

「裕人の兄貴が死んだってことが嘘じゃないってわかる
本当に裕人の兄貴はもういないってことが」

「…お前も辛かったな」

「同情なんかまっぴらだ!!」

「そんなんじゃないさ…飲めるんだろ」

グラスに注がれたバーボンを受け取り、一口飲めば俺は「うまくねぇ」と答えた

「俺だってうまくて飲んでるわけじゃないさ」

「…裕人の兄貴、どんな人だったんだ？」

「絵を描くのがうまくてな…よく、俺たちの似顔絵を描いてくれてたよ…
弟がいてよく手紙と一緒に自分が描いた絵を送ってたよ…自分とは違って大人しい子だと言ってたよ…」

「………」

「裕人の親は」

「…交通事故だって言ってただろ…俺も詳しいことは知らない」

「そうか……あの子はこれからどうするんだろうな…日本には肉親もいない、アメリカで兄貴も失った…生きる場所がない…」

「…………」

ドラマにでも出てきそうなシナリオ
だがこれは現実だ…

「それは、アイツ本人が決めることだ…俺たちが立ち入る義理はない」

「…そうかもしれんな…だが、アイツはユウキの弟だ…見て見ぬフリはできん…」

「でもどうするって言うんだよ…アイツを養子にでもするのか？」

「…さぁな、それはここから出た時にでも考えるさ」

平穏な日本で暮らしていて、アメリカに留学に来たら両親と兄を亡くすことになった裕人は、今どんな気持ちなんだ…

少しでもそばにいてやりたい、少しでも痛みを分かち合いたい

「…もう、寝よう…」

「……あぁ」

「おやすみ、アッシュ」

自分に与えられたベッドに戻り、俺は仰向けになって天井を見上げらる

裕人は今、何を思ってるんだろうか…