元殺し屋はヒーローになる17 (ページ44)

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『その子も私も、助かることを望まなかった
自分のせいで誰かが死ぬ、自分さえ我慢していれば誰も傷つかないで済む…そうすり込まれてきた』

陽の光もない、どこにも明るさなんてない闇の中でたったひとつだけわかることは、殺らないと死ぬこと
たったそれだけだった

自分の身を守るには、誰かを殺さないといけなかった
15になって、暗殺のやり方を教わって自分のスキルが高くなったのは感じていた

『子供の頃から大人は理不尽なことを言って他人のせいにする
だけどそれは人間がすることであって、子供がしないと言うのはありえないことだった
理不尽なことがあるのは当たり前で、その理不尽と戦うためにどれだけ努力してきたかは忘れたよ』

もう意味がわからないとしか言いようがなかった
親に捨てられて、オヤジ様に拾われて、炎司さんに養子に迎え入れられて、誘拐されて、痛めつけられて絶望させられて

『私が人を好きになることは絶対にない
勝手に好きになって、かってに失恋して、馬鹿みたいな時間過ごしてるのは私にしたら無駄な時間でしかない
そんな時間があるなら………』

そこまで言ってハッとした
アッシュはさっきなんて言ってた？私を好きだと言ってくれた
その人間の気持ちを今否定したような言い方をしたよな？

『…やっぱ嘘、今の嘘、なし』

「え？」

『嘘でーす』

胸の前でバッテンを作れば「はあ？」と眉を寄せて不機嫌な顔になるアッシュがいる

『まあ、人が人を好きになることはいいことだと思うし、私がそれを止める権利はない』

「なら、俺が青子を好きでいる権利は青子でも止める権利はないってことだよな？」

『……好きになってもらうのは構わないけど、応えるつもりはないよ？』

「いーよ。いつか絶対「好き」って言わせるから」

『言ってろ…』

ビリッと書き殴ったメモ用紙を破ると「何書いてんだ？」と覗き込んできた

「日本語？」

『うん』

「なんで書いてるんだ？」

『教えない』

それを四つ折りにしてたたむと同時にタイミングよくバサバサと飛んできた鳥の足に結えつける