元殺し屋はヒーローになる17 (ページ38)

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バイバーーイと手を振っていく男の子と頭を下げる父親を見送ると、「すごいんだな」とアッシュがベーグルの入った袋を手渡してきながら言った

「腹話術」

『あぁ…。友達に教えてもらったんだよ
去年、ちょっとしたことで子供の相手をすることになったことがあってその時、あの子ぐらいの子が泣いてて、友達が腹話術であやしてたのを見て教えてもらったんだよ』

「へぇ…」

『結構難しいんだよ？
口動かさずに言葉発するの』

簡単に見えてできない腹話術を習得するのにどれぐらいかかったっけ
カエデちゃんもよくこんなの身につけたよね…お芝居のためとか言ってたけど、努力家ってああいう子を言うんだね

「…青子」

『ん？』

「…どうして、ヒーローを目指したんだ？」

遠慮気味に聞いてきたアッシュに私はじっと見つめた
手渡されたベーグルの袋を下げ、セントラルパークから出る

『んー…最初はちっちゃなことから始まったんだ』

「？」

『私は4歳ぐらいで養子に貰われてさ…
その時、“個性”が発現した時だった…貰われた先はとても強い人の家で、毎日毎日訓練をさせられた
まだ4歳かそこらの子供にゲロ吐かせるまでね…』

「………」

『5歳になって嫌になって家を飛び出したあと、知らない人間に声をかけられたんだ
ソイツが、私を10年間苦しめることになった元凶だった』

「！」

『ソイツは私を誘拐すると7年間絶望という文字を私に植え付けさせた
7年間ソイツの元にいたあと、命かながら逃げた後今の兄さんたちに助けてもらったんだ
それが12の時』

今でも覚えてる…兄さんたちが私にどれだけ優しくしてくれたか
今でも、身に染みてる

『そこからなんとか勉強も追いついて、進学校に通った時…実の兄に見つかったんだ
そして…“個性”破壊の研究をさせられた』

「………」

『なんとか中学を卒業して高校入って、兄の計画と止めることができて…今に至るってこと』

「…俺より、大変じゃないか」

『どこが。男の相手をさせられてた奴より、マシな人生だよ』

「……」

『同意じゃないのにそんなことさせられて、どんだけ辛いか…』

私はどれだけ辛くたっていい
いつか解放されることを信じて突き進めばいいだけだからだ