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「おーーーい、アレン!」
『……ミカエル』
「俺、明日からナイガラルレラ地区なんだ」
『…………長期戦?』
「おう。半年は帰ってこれねえな〜。ガイルも、半月、リンガーリャル地区だろ?」
『……………うん』
廊下で合流した同期のミカエルは両腕に包帯が巻かれており、訓練帰りなのが伺えた
アレンは真っ直ぐと前を見て、何を考えているのかわからない色を見せた
ミカエルはそんなアレンをガイルと共に気にしていた
あんなに感情豊かで、物知りになりたいと言っていたアレンが、本よりも飯、知識よりも殺しを優先し始めていたことに恐怖と戸惑いがあった
俺の知っているアレンは
「なあ、アレン」
『………?』
「アレンは、自由になりたくないのか?」
『…………自由?』
「あぁ!人なんか殺さないでいられる、自由だよ!」
『……………考えたこと、ない』
ミカエルに言われて、アレンは立ち止まって訓練ルームで反吐を吐きながら訓練に臨む生徒を見た
上官たちにしごかれている後輩たちを見て何も感じないアレンに、ミカエルは「自由になれば、あんなことしなくて済む」と言うと、アレンの琥珀の瞳が揺れ動く
「なあ、アレン!! 俺たちは、自由になろう!!! ここを飛び出して、自由になろうぜ!!」
『…………………!』
「人なんか殺さないで!青い空の下で!うまい飯食って!そんで笑って!3人で!ガイルと俺と、アレン3人一緒に!!!」
『…………………………』
「俺は、半年帰れないけど、帰ってきたらここから逃げよう!! 一緒に!」
『……………………』
だから、自由になろう!
アレンの壊れた心に、温かいものが注ぎ込まれていく
ミカエルは輝いた笑顔で笑い、「絶対だからなー!」とナイガラルレラ地区へと向かった
1人残されたアレンは、自分の胸がポカポカしているのに気づいた
逃げる?どこから?ここから?なんで?自由になるため?
戸惑いと疑問が押し寄せてきて、アレンはミカエルの背中を見る
自由になると豪語したミカエルが眩しかった
人を殺さない生活をするんだ!と胸を張って言ったミカエルが強いと思った
ミカエルがナイガラルレラ地区の戦争で、惨たらしい死を遂げたことによって、アレンは二度と自由が手に入らないことを悟った
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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2022年3月12日 9時