12話 ノア ページ11
ー約十数年前ー
「チンタラ走るな!!」
「はい!」
「手足を動かせ!」
「はい!」
トレーニングルームで激しい怒号が飛び交い、数日前まで自分もあの中にいたと思うとゾッとする上に解放されてちょっと安心する
自分の荷物を持ってせこせこと上官のあとをついていくと、「ここだ」とひとつのメインルームに連れてこられた
メインルームの外側の壁には、「umber」と書かれている
「にしても、変わった奴だな。アンバーに入りたいなんて」
「俺、アレンさんに憧れて入ろうって決めたんです!」
「あのアレンに?化け物に憧れるとはなぁ…さすが、フルスコアだな」
「へへへっ」
上官がアンバーハイエナのメインルームの扉を開けると、自動的に部屋の電気がついた
広々とした部屋には、ソファやテーブル、ある程度の生活ができるような設備が整っていた
「お前の寝床と部屋はメンバーに聞け」
「………あの、皆さんは」
部屋の中には誰もいなかった上に、上官はすでにいなかった。仕方なく俺はアンバーメインルームの中に入って隅の方にちょこんと座った
いよいよ、本当に俺は今日からアンバーハイエナの仲間入りなんだ!
ワクワクとした期待を膨らませている中、同時に不安が頭を掠める
アンバーハイエナは他のハイエナとは違って危険な場所に飛び込むいわば特攻隊のような仕事をこなすことが求められる
つまり、必然的に命を差し出すことになる
(……死にたく、ない)
ナーヴァスになりかけている時、『………お前、何してる?』と声をかけられた
低くて凛として、それでいて心地の良い声に顔を上げると、短くウルフカットにされた灰色の髪の毛と、その灰色よりも存在を見せつける琥珀の瞳を持った人が目の前にいた
(アレン…さん、だ)
ハイエナになるための強化訓練の際、上官に見せてもらったシュミレーションビデオ
ハイエナのトップであり、アンバーハイエナに所属して1番長いと言われている、ハイエナの憧れ…アレンさんが目の前にいる
いきなり憧れの人と対峙して、俺はテンパりながら「あっ…きょ、今日から、ここに…」としどろもどろのカミカミで自己紹介をした
『…………………はっきり、言え』
「はいぃっ!!!」
無表情でしかも少し怖いアレンさんに言われて、俺は完全にビビった。それはもう、チビるほどに
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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2022年3月12日 9時