無表情と北さん (ページ42)

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自然と目で追いかけるようになって、あいつが図書室に入ったら俺も入って、カレーパン食べたら俺もカレーパン食べたりして、時川が好きなもんをちょっとでもわかりたいからって、おんなじような行動した時もあった

ちょっとばかし恥ずかしいけどな

けど、3年になって同じクラスになれて嬉しかった
教室に行ったら時川は窓際に座ってるし、その隣の席は誰もおらん

自由席なら好都合や
これを使わん手はない

わざとらしく声をかけて隣に座ることを許可してもらい、積極的に自分の名前を覚えてもらおうと思った

噂では時川は人の名前を覚えることが極度に難解で、次の日には相手の顔を忘れるほどだったらしい
実際、俺もそうやったみたいで、次の日には忘れられとった

けど

毎日話していくうちに覚えてもらえて、球技大会からよく話すようになって、仲のええ友達になることができた

けど、“友達”やない“好きな人”や
俺、あとは何したらええんやろ

こうやって2人で出かけることまできて、話すようなって、あとは何したらええんや？

言うたらいいんか？ストレートに

『北、バス来たよ』

「お、おう」

後に続いてバスに乗り込み、さっきの思考を追い払うように窓の外を見る
のどかで緑が広がるええとこや

『僕、よくここで泣いてたんだよ』

「？」

『お師匠はね、強い人で。僕たちが死なないようにって、いろんなことを教えてくれた
武術だったり、護身術だったり、薬草の見分け方とか
まあ、他にも滝から落とされたりしたよ』

「よう生きとったな」

『うん。けど、今じゃそれが懐かしい』

迷いもない、霞むような色ではない
光の入ったグラデーションの綺麗な瞳

俺は光があろうとなかろうと、時川の目が好きや
こんなに透き通った目、俺は見たことない

「…………時川」

『？』

「………………………………気、早いけど」

『？』

「春高、見に来てくれ」

『……春高？』

「春の高校バレー、訳して春高や」

『…………高校最後の、バレー』

「おん」

『……………………………わかった』

「……もし、もしや」

『？』

ドクンとうるさなっていく自分の心臓を沈めたい一心で口を開いた

「春高で1番とったら、時川に言いたいことあんねん」