無表情と北さん (ページ20)

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「お前みたいなやつに俺が負けるわけない！」

『ふうん、僕君と対戦したことないと思うけど』

「去年やったわ！」

『そうなんだ。つまらないから帰るね』

「マイペースかっ！」

投げつけられた竹刀を片手で受け取り、「勝負や！」と突っ込んでくる

「え、時川さん!?」

「あかん、逃げた方が」

『邪魔だから下がって』

｢｢え？｣｣

持っていた鞄を兄さんに投げ渡し、両手で構えて踏み込む
ダンッと廊下に響く踏み込みの音と、バチンッと当たる双方の竹刀

うん、力は僕の方が劣るけど筋はいいね

「負けるわけにはいかんのや！」

『それは君の都合でしょ？』

「その澄ました顔が腹立つねん！」

『知らないよ。僕に負けて勝手に腹を立てたくせに僕の顔にまで文句言わないでよ』

バチンバチンと竹刀を当てまくり、彼の手、足、胴を竹刀で叩きつける

カランカランと落ちた竹刀を蹴り飛ばし『ねえ、もう終わり？』と竹刀の先端を相手の鼻先に向ける

『すごいね。よくその腕で僕に挑んできたね
無謀だけど褒めるね。バカだってことはよくわかったよ』

「な…んやと！」

『だって君、剣道の才能ないもん』

振り下ろそうと掲げた竹刀をパシリと取った誰かがいて、僕は振り下ろさずにガクンと体を揺らしてしまった

体幹がいいはずなのに…

チラリと後ろを見れば、僕を見下ろす…確か、北だっけ？
そいつがいた

「廊下で剣道すんな、危ないやろ」

『…僕のせいじゃないよ。勝手に挑んできたから受けただけだよ』

「やからってここでするんはちゃうやろ
剣道するなら道場でしい」

『君には関係ないでしょ。それに僕は被害者だよ』

「どう見ても加害者やん」

「必要以上の打ち込みやったやん」

『君たちうるさいよ、そんなに叩かれたいの？』

ブォンと北から竹刀を取り上げて、『僕だって暇じゃない』と腰を抜かしている挑んできた相手を見下ろす

『本当にやめた方がいいよ、君弱いもん』

カランカランッと放り投げた竹刀が音を立てて床に転がり、僕は兄さんから鞄を受け取り『兄さん、帰ろう』と先に歩いていく

「…相変わらず、剣道の才能は人よりずば抜けてるな」

『…みんな、よく僕に挑んでくるよね
下手くそなのに』