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「昔の恋雪の口癖は「人のためにすることは巡りめぐって自分のためになる」だったんだ
そしては人は、自分ではない誰かのために信じられないような力を出せる生き物なんだって、父さんからの言葉を信じ切ってた」









裕紀は「バカだと思ったよ」と言った









「情けは人のためならず
誰かのために何かしてもろくなことにならない
それを身をもって経験したんだから間違いなかった
人のために何かしようとして死んだ人間の言うことなんてあてにならない
俺はずっと今も今までもこれからも思ってた」









馬鹿馬鹿しいと一蹴した裕紀は、「あいつは何もできない奴なんだ」と話を変えた









「米も他に一人で炊けない
洗濯一つもままならない、声をかけなきゃ飯だって食べることを忘れる
それぐらいバカで何も考えてないんだ

もう、どうしようもないんだ…救われないんだよ」









肩を震わせ、泣いている
裕紀は「俺はあいつがバカだと思うよ」と鼻を鳴らした









「何も考えないくせに、言ってることは至極まともで正論だ
そのくせ澄まし顔で腹が立つ
だけど…………それが恋雪なんだよな」









自分と間反対の人間の双子
それはきっと受け入れることは難しいんやろう
裕紀はこの時、時川と双子だったことを少し悔やんでいた









「ごめん、情けないとこ見せた」

「ええよ、気にせんで。背負うもんはしゃーない」

「…俺、北みたいなのが兄貴だったらよかった」

「それは嬉しいわ」









フッと軽く笑うと「お前…モテるだろ」と言われた
なにがや?と首を傾げれば「無自覚かよ、腹立つ」と頬をつままれた




痛い、やめろ









「……恋雪のこと、よろしくな」

「?」

「お前になら多分、恋雪のこと任せれるよ」









裕紀は曇りのない瞳で俺を見る
それはもう迷いも何もない、澄んだ瞳やった









「恋雪、そろそろ戻るぞ」

『…うん』

「なんかあったのか?」

『…別に』









ベンチから立ち上がり、とことこと軽い足取りで戻っていく時川に、「一人でできることなんてほんのこれっぽっちなんだよ」と裕紀は言うた









「だから、人は力を合わせて頑張れるんだ
北も、力合わせて頑張ろうな」

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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2020年12月12日 20時

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