メシとバレーと恋愛事案 (ページ11)

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体育も終わり、最後の授業になると隣の席の宮くんは、またメモに何かを書き記し「菜野さん、菜野さん」と私を呼んだ

微かなその声に反応して『なぁに？』と顔を少し低くして話しているのを隠すようにする

宮くんは、「おしゃべりしよ」と口元に指を当てながら「静かに」というポーズをとりメモを渡してきた

そのメモを受け取りながら小さく頷き、紙を広げると「宮治です」という自己紹介の名前が書いてあった

ノリに乗ろうと、自分の名前を書き記して彼に送り返すと、彼は少し笑ってメモにまた何か書き記して行く

“好きな食べ物は？”

“好きな教科は？”

“嫌いな食べ物は？”

“苦手な教科は？”

“最近ハマっていることは？”

“何が好き？”

ありきたりなそんな会話がメモの中で繰り広げられていると、授業も終わりを告げ始める
チャイムが鳴り響き、担任の先生が来るまでざわつく教室で待つと、「菜野さん、おもろしろいな」とメモを持った宮くんがそう言った

『そー？』

「そーやで。菜野さん、部活は？やってんの？」

『お生憎、入ってへんよ』

「なんでや？入りたいんがなかったん？」

『んー、家庭事情やね。特別入りたいもんもなかったし、今はやらなあかんこと沢山あるって感じだね』

勝将や家のことだってある
これ以上やりたいことを増やしても手が回りきらないだろう

「家庭事情…か、ごめんなズケズケ言うてしもた」

『ええよ、気にしてへん。宮くんは確かバレー部やったね』

「おん」

『ポジションは？』

「ウィングスパイカーやで」

『かっこええな～』

ボールを打つ真似をした彼にそう言うと「ありがとう」と少し照れた顔でお礼を言ってくる
ざわついた教室に「ホームルームするから座れ～」という担任の声が投げられた

簡単な連絡だけされた後、「今日は終わり、お疲れ～」と言う言葉と同時にみんなが立ち上がり、それぞれが荷物を持って教室を出て行く

「響紀、帰るん？」

『おん。早よ帰って勝将見たらな』

「あんたホンマ偉いな」

「1年の頃から思ってたけど、過労死しそうや」

『せーへんよ』

困ったように笑うと「あんま無理しいなや」とクラスの女子に言われて『おん』と返しておいた