元殺し屋はヒーローになる14 (ページ11)

今日:14 hit、昨日:5 hit、合計:54,201 hit

101-2 ページ11

カルマside

夜も深くなり、避難先の製糖工場では島民が疲れと不安の中で浅い眠りについていた
E組も周りを見張るように交代で仕事をこなす

大人たちの緊張が伝わるのか、ぐずりだした赤ん坊を手慣れたように磯貝があやしたり、咳き込む老人たちの間を島の医者が不眠不休で竹林と静かに診察して回っている

そして俺は渚と和室で活真があれからずっと目覚めない緑谷と爆豪かっちゃん、そして出血多量で倒れた青子を治療し続けていた

真幌はその活真に付き添っている

「活真くん、少し休んだ方がいいよ…」

普段はもう眠っている時間帯なのだろう
真幌も少し眠たげだけど、なんとか起きているような気がする

それに、活真がこんなに“個性”を使うのは初めて
疲労は想像以上だし、心配する渚に活真は首を横に振った

「ううん、まだやる」

「でも」

「やるんだ」

活真の強い意志にどこか誰かさんと似ているものを感じた渚は、俺と目を見合わせてきた
そりゃあ、ヒーロー目指す人間は誰にでも似ているよね

活真は疲れているけど絶対にやめるつもりはない
森の中で、ボロボロになりながらも俺たちを敵に近づけさせまいと敵の足にしがみついた3人の姿が胸に焼き付いている

今思い出しても、俺が何かできることはなかった
俺もなにかと思うけど、あの時の青子の判断は正しかった

(諦めるもんか)

救けたい。その一心で活真は“個性”を放出し続けてる
俺も、何かできることはないのか？
俺も、青子のためにできることが、ないのか？

命を救けてもらった
そしてそれ以上に大切なものをもらった

胸いっぱいの勇気を

胸いっぱいの思い出を

胸いっぱいの…絆を

(ヒーローは)

(青子は)

(諦めない………！)

(死なない)

力を込める拳にさらに力が込められた
強い想いがきっと、青子に届くはずだから

「カルマ…」

「！」

3人の体がうっすらと光り始めた

「う…………うう………」

「うう…う………」

『んぅ…ん………』

「デク兄ちゃん！」

「バクゴー！」

「「青子!!」」

うっすらと開いた3人の瞳を見て、俺たちは体を前のめりにし3人を覗き込む