青葉城西の1人のAssassin (ページ16)

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「はい、これでいいよ」

『ありがと…』

「動かしにくい？少し緩めた方がいいと思うんだけど…」

『いや…いい、慣れてる』

「…都笑、それは慣れちゃダメだって言ってるよ？」

『…………』

パタン、と救急箱の蓋を閉じた片岡に言われて目を伏せ、『わかってる』と返せば、「わかってない」とすぐに言われた

「…言っても聞かないのはわかってる
でも、自分のことは大切にして。お願いだから」

そう言われて、小さく頷けば「安静にしててね」と頭をポンポンと撫でられた

撫でられた頭に、ゆっくりと手を置き、ぐしゃっと髪を掴む

“ 俺の好きな髪の毛だ ”

“ 俺の好きなメッシュ色だ ”

やめろ

やめて

「雪霧ちゃん？」

『(ﾊｯ』

目の前に現れた及川さんは、「大丈夫？」と心配そうな顔つきで覗き込んできた

触れることもなく、ただ見つめてくる

「顔、真っ青だよ？」

『…………』

フワリと匂ってきたシトラスのいい香りと、汗の匂い

『……及川さん』

「んー？」

『…ちょっとだけ、胸…貸してください』

「え？」

困惑する彼の胸に額だけを押し当て、黙ってじっとしていれば、「え、あ、ゆ、雪霧ちゃん!?」と慌てる及川さんに『1分だけ』と伝えれば、彼はゆっくりと頭を撫でてくれた

トクン、トクン、と優しい心臓の音が聞こえて来る

シトラスのいい香りが鼻をくすぐる

じんわりと伝わる人の温もり

“ 俺のだ ”

“アイツ”とは違う、安心できる心音

「ん、雪霧ちゃん？」

ゆっくりと顔を上げて『ありがとうございました』と、伝えれば「どーいたしまして」と及川さんは優しく微笑んでくれた

「おい、グズ川、さっさと練習に戻れ」

「ひどいよ、岩ちゃん!! 都笑ちゃんが俺に甘えてくれてたのにッ」

「知るか」

『…都笑、ちゃん？』

目を瞬かせると、及川さんは小さく微笑んでウインクをした