5話 卒業の時間 ページ26
市民会館にて、椚ヶ丘中学校3年生の卒業式が執り行われた
きっちりと制服を着て、ネクタイもピンッと結んで…俺たちは卒業式に参列した
「暁 月宵」
『はい』
俺の名前が呼ばれてそのままゆっくりと壇上まで向かう
殺せんせーは…
「E組の制度は間違ってるから変えさせよう」とか、そういうことはこの1年間で一度も言わなかった
「理不尽なことが世の中にあるのは当たり前」
「それを恨んだり諦めている暇があったら…」
「楽しんで理不尽と戦おう」
その方法をいくつも教えてくれた
「いい目をするようになったね」
『！』
「担任の遺した教育の賜物だ。卒業おめでとう」
『…はい。理事長も、やり過ぎない程度にお元気で』
式は滞りなく進み、卒業したことにみんなが喜びながら話し合ったりしていた
「月宵」
『…母さん』
「…卒業おめでとう」
『ありがとう…』
「来月から、宮城に行くのよね…1人で大丈夫？」
『うん、平気だよ…』
「ちゃんとご飯食べてね？」
『うん』
気弱な母さんに俺は大丈夫なことをちゃんと伝えた
「よかったの？」
『…何が？』
「お母さんとの会話」
『…別に、それに…会えなくなるわけじゃないから』
俺たちの卒業式が終わった途端、バタンッとドアを開けて中に入ってくるマスコミが押し寄せてきた
俺たちをカメラで撮り、インタビューをしようとずっと迫ってくる
ﾌﾞﾜｯ
『！』
俺たちE組の頭上に何かが被せられた
椚ヶ丘の校章だ
「大半が今日で縁もゆかりもなくなるとはいえ、仮にも同じ学校で学んだ生徒だ
見捨てれば支配者の僕の恥になる」
…素直じゃないな、浅野は
玄関正面にバスが止まっており、そこまでA組のみんなが俺たちを取り囲みながら進んでいく
バスに1人ずつ乗り込んでいくと、浅野は赤羽に殺せんせーのことを1から全て説明してもらうと言った
「別にいいけど、浅野クンの固い頭じゃ全部理解は難しいかな〜」
『ははは…』
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2021年2月13日 22時
