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“つきましては領主不在につき一時的に王家に返上されていた領地と爵位を貴殿達に返還したく思います
3月17日 午前10時バッキンガム宮殿にて特別受勲式を行います
お会いできるのを楽しみにしています
ヴィクトリア”
お召し物に着替えるために鏡の前に立つ坊ちゃんの背中には、烙印が押されていた
「まだ痛みますか？」
「…いや、痛みよりも焼けつくような怒りを思い出す」
「貴方に焼き付いたのは消えない怒り…と言うわけですか
ふふ。そう思えばこの醜い傷も悪くありませんね」
全てのお召し物を身にまとった坊ちゃんとお嬢様
「よくお似合いです、坊ちゃん、お嬢様」
「世辞も執事らしくなってきたじゃないか」
「恐れ入ります。でも嘘は申しおりませんよ」
「フン。行くぞ、セバスチャン！」
宮殿で勲章を受け取るおふたりを遠くから見守ると、病院でお会いした親戚の方…アンジェリーナ・ダレス様が「もっとそばで見ればよかったのに」と声をかけてきた
「貴方はシエルとアニエスにとって、もう家族も同然だわ」
「家族だなどとおこがましい。私は、あくまで執事ですから」
式も終わり、長い廊下を歩く
「これで正式に貴方達は伯爵と令嬢となった
地位も財産も美しい婚約者も全て貴方のものです
どうです？復讐などと言う馬鹿げたことはやめて、このまま幸せに生きていくというのは？」
「……それも悪くないな…」
ゆっくりと手を伸ばせば、「でも」と振り返りその手を引っ込める
「僕は幸せを手に入れるために“ここ”に戻ってきたわけじゃない。僕もアニエスも戦うために戻ってきた
シエル・
我が悪しき名にかけて、必ず復讐を遂げてみせる！」
嗚呼
躊躇うことなく光に背を向け、気高い歩調で奈落へ突き刺さむその姿の
なんと美しく愚かしいことか
「命令だ、セバスチャン。お前は僕たちの剣となり盾となれ。僕たちに勝利を！」
「
必ずや勝利の王冠を貴方方に」
絶望で飾られた王冠を戴く時
貴方達の魂はきっと
滴るほどに美味だろう
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2020年10月11日 21時
