強者の首を狩れ【BANANA FISH】 (ページ10)

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飲んでいたビールを飲み干すと、『チッ…』とスマホ画面に映し出された文字に舌打ちする
と言っても、元クラスメイトたちからのラインであることには変わりないのだが、その差出人の名前が気に食わないのである

「？」

(寺坂の奴…用もないくせに)

ブチッと電源を落としてやろうかと思ったが、思いの外仕事が捗らずにスマホから手が離れない
仕方なく、指を忙しなく動かしていると、「姉さん、まだ終わらないの？」と英二が覗き込んでくるのに『あぁ』とスマホ画面を見ながら答える

「目、悪くなるよ？」

『全部デジタル化してる世間に文句言ってくれ』

「ただの屁理屈だよ、それ…ブルーライトカットのメガネは？」

『ホテル』

「姉さん…仕事する気ある？」

『あるからやってる。ほら、仕事手伝ってこい、若者』

「なんだよ！姉さんだって若者じゃないか！」

『バリバリ働いてて忙しいんだよ、ホラ』

「もーーっ！」

『くくくくっ』

ぷりぷりとして仕事の手伝いをしに行く英二に柔らかく微笑みながら見送り、寺坂からのメッセージを見る
時間がある時でいいから連絡をして欲しいこと、できれば早めの方がいいとのこと

『アメリカ行ってるから無理だって言ってただろうが、あのアホヅラ』

返信として『うるせぇ』とだけ返しておき、『時間ある時な』というのも付け足して、寺坂からのメッセージを着拒否にしておいた
これでしばらくはうるさくないだろう。ポケットから滅多に吸わないタバコを取り出してライターで火をつけると、「あんた、タバコ吸うんだな」と隣に座っていたあの天使顔が聞いてくる

『なに、悪い？』

「いーや？日本人ってのは、そういうの好きじゃないと思ってたからな」

『タバコも吸う日本人もいりゃ、酒を飲む日本人もいる…人間誰しも娯楽のひとつやふたつ持ってるよ』

「へぇ？」

スーーッと吹き出した白い煙が「姉さん！姉さーーーん！」という英二の掛け声ですぐに消えていく

『だーーーっ！聞こえてるっつーの！なに!!!』

「タバコはだめ！」

『うるっせぇ!! ストレス発散の典型的な落ち着き方奪うな！』

私と英二のやりとりに、ギャングたちは「日本人怖え」と震えていた
ギャングの溜まり場？んなもん、不良の溜まり場の方が汚い汚い

「大体、姉さんはいつも喧嘩っ早いくせに頭いいのに」

『あ"ーーなんにも聞こえませーーーーーん』

「姉さん!!」