強者の首を狩れ【BANANA FISH】 (ページ8)

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「いよいよ、らしくなってきたな」

地下へと続く階段を降りていく伊部さんと英二の後に続き、トン、トンと靴を鳴らす
通路は昼だというのに汚くて薄暗い上におかげで狭い

「何かあったらすぐ駆けつけてくれるって言ってたけど、大丈夫かなぁ…」

『なに、ビビってんの？』

「だっ、誰がっ！」

不安がって外を見上げている2人にクツクツ笑いながら素通りしていくと、英二がムキになって言い返してくる
コツン、と最後の段を降りて『大丈夫さ』と振り返って答える

『奴らも馬鹿じゃないんだ。人がいい2人と話せば、毒気も抜かれるさ』

「そういうもんかなぁ」

『そういうもんだよ』

サングラスを胸ポケットに引っ掛けると、「お姉さん、余裕だね！」とスキップが聞いてくるのに『生憎、肝が据わっててね』と肩をすくませながら答えた

店内に入ると、タバコと酒の匂いが充満している上に屈強な男たちがこちらを見ている
それを見て、2人が私の後ろで震えているのに無言でジトリと見る。女の私よりも男の2人が怯えてどうするんだってんだ

「なーにびびってんだ。こっちだよ」

『…………』

「えっ、ちょっ！」

「ね、姉さん！待ってよ!!」

スキップにカモンというジェスチャーをされて後を追いかけると、ビリヤードをしているのが見えた
17歳の子どもでも、ビリヤードをたしなむ技量があるとは思えなかったので、ヒューと口笛を吹いた

「アッシュ、連れてきたよ。ジャパンからあんたに会いにいたんだぜ」

「あぁ」

ビリヤードのキューを持ちながらゆっくりと振り返った少年は、アッシュと呼ばれやはり昼間に会ったあの美丈夫だった
こんなに強面の奴らの中でこんなにも美丈夫なやつがいても大丈夫なのか内心心配したものの、ボスということはケンカが強いということだろう

(関わりたくねー)

立ち止まって顔を横に向けて視線を合わせないように『帰りて〜』と日本語で小さく呟いた

「えっと、僕は日本のカメラマンで、雑誌の仕事でいろいろキミたちのことを聞きたいんだけど」

「…なにを聞きたいんだ？」

2人(なんか迫力あんなぁ…)

『こっち見んな』

「いたっ!?」

チラッと見てきた英二の尻にドスッと蹴りを入れてやると、「ひどいよ！」と涙目で訴えてくる
そんな英二にべっと舌を出してやると、「姉さんの意地悪！」と言われる
おーおー、なんとでも言えばいいさ