強者の首を狩れ【BANANA FISH】 (ページ38)

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かわいそうな英二。お前の勇姿は覚えておくからな。なんてからかいの言葉を脳内で再生させながらクックッと耐えながらも腹を抱えて笑った。だって仕方なくない？面白いんだもん

口をあんぐりと開けている2人も面白い上になにがなんだかわかっていない英二はパニックで、こっちを見て助けてという視線を向けてくる
悪いな英二、旅に犠牲はつきものだ

「ん……」

『生々しいな』

舌を入れているアッシュを見ながら、アメリカ人というよりも外国人は初対面に近い人間にキスをするもんなのか？
これは哲学ができるな。カルマあたりに哲学で卒業テーマを提供してもいいと思う

ゆっくりと顔を離したアッシュは、瞳を鋭く光らせて英二を見つめたあと、こちらを一瞥してくる
視線で念を押されて首を傾げてみせる。わかってるさ、やれることは全部やる人間でね

すぐに離れたアッシュは、軽い調子で英二の尻を揉みウインクしてみせた。パチーンという音と共に星が飛んできて英二は揉まれた途端にギョッとした顔をして固まっている

「じゃあな、スイート。バーイ」

「……………」

飄々と去っていくアッシュよりも、固まっている英二を見る
クックッと笑いながら『英二、大丈夫？』とうっすら涙がのった目元を拭うと「僕、ちょっと、トイレ…」とパタパタと走っていく

ウブだなぁ、なんて反応を見て楽しむ
ありゃ、ファーストキスだったんだろうな〜。外国人にファーストキスを奪われる相手を見るのはこれで二度目だ

アッシュからのアレはきっと英二に何かを伝えたいためなんだろう
トイレに行った英二の様子を見てくるという建前でトイレに向かうと、少し考え込んでいる英二が出てきた

「姉さん」

『なんかもらった？』

「え？あ、うん。これを」

受け取ったのは小さな紙。この年で老眼なんてことはない。ただよくこんな細っこい紙に書けたな
手紙の内容はこうだ

危険を承知で頼む
チャイナタウンのドイヤーズストリートにある張大という店に行って、ショーター・ウォンという男に会うこと

アッシュの名前を出せば会えるはずで、ドクター・メレディスからアッシュが預けたものを受け取り、安全な場所に隠すこと

くれぐれも気をつけてほしいこと
そしてこの内容は私以外に話してはいけないという文字も添えられている

この手紙、燃やしていいな？いいよな？