7話 ミッション ページ35
「法律上は問題ないが、まれなケースだ」
『そのまれなケースを引き当てた類い稀ない運の持ち主ってわけね。アホらしい』
「アッシュはこれからどうなるんです？」
「それは…」
どうなるもなにも、きっと苦痛だろうな…こんなところに1人放り出されるんだからな
あー、寺坂潜入させて〜
「いよお〜、シュンイチ！」
「おー、マックス！」
「久しぶりだぜ！」
「ったく、お前はァ。なんだよ、ムショになんか放り込まれやがって。警官ぶん殴ったんだって？お陰でえれー迷惑だぜ！」
「がははは！すまねーすまねー！」
大柄に笑った男に言ってやりたい。謝って済むなら警察はいらないのだと
なぜこうなったのか…それはチャーリーの口から聞いたことだ
今日入所するというアッシュをこの大柄の白人の男に守らせるということ。しかもそれが同じ囚人たちからだと
やはり、そういう趣味のやつはごまんといるということか。貧乏くじよりもひどいくじを引いたもんだ
チャーリーの話を聞いた伊部さんの友人、マックスは「無茶言うなよ、おい」とうんざりした顔で言ってくるのに、まあ当たり前の反応だよなと鼻で笑っておいた
「他人のことどころじゃねえ。自分のことで手一杯だ！
第一、あんな荒っぽい相手に、このデリケートな俺に何ができるってんだ！」
『デリケートなら警官ぶん殴らないだろ』
「……………」
私のそのツッコミにその場の全員が無言になる
「無理を承知で頼んでるんだ！」
「……つってもよぉ…」
「お願いです。彼は僕の命の恩人なんです。どうか、彼を守ってもらえませんか？」
英二の純粋でまっすぐなそんな眼差しを向けられては、どんなに嫌がっても断ることなんてできないだろう
こりゃ、マックスの負けだな。なんて鼻で笑い、次に出てくる言葉を頭の中で予想しながらクツクツと喉を鳴らした
アッシュがフォークナー刑務所に入所してから何日か経った今日、パソコンとタブレット、スマホを駆使して先日送った血液の分析結果をまとめているところだ
会社の方は私がいなくても回せるし、大抵のことは私が暇な時に動かしているから特になんの問題もない
こりゃ、個人経営っていうだけで楽勝だな
『主成分はリゼルジック・アシッド、ジエチルアミド…これだけ見ると、LSDか』
送られてきたデータに目を通しながら、ふーむと唸る
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2021年10月19日 11時
