強者の首を狩れ【BANANA FISH】 (ページ4)

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「海斗姉さん！海斗ねーさーん！」

『うるさーい』

羽田空港の待合室で自分たちが乗る飛行機の搭乗時間まで暇を持て余している間、パソコンとスマホを平行して使っていると、待っているのが飽きたのか、はたまた時間を持て余して暇になったのかよくわからない英二に目を向けることなく、答えると「姉さんは楽しみじゃないの？」と聞いてくる

生憎、エジプトやら世界の観光名所を1日で何十カ国と行った人間は、アメリカ云々は別にそこまでだ。なんなら観光する暇もなく写真だけ撮って夕方に日本に帰ってきたぐらいなのだから

『暇なら小遣いあげるから本でも買ってくれば？』

「お腹すいたしホットドッグ買ってくるよ」

『ついでにマスタードたっぷりのも買ってきて』

「はーい」

売店の方にパタパタと走っていくのだけ見送ると、パソコンの画面に現れた写真を一瞥する
黄色いまあるい顔、憎たらしい割にはずっと笑ってて、万能なスピードと触手を持て余している教師を思い出すだけで殺意が湧いてくる

だけどその殺意が、どす黒いモノではなく爽やかなモノであることに変わりがなく、自分は本当にあの頃からそこだけは変わっていないのだと鼻で笑うしかなかった

うっすらと崩壊をしている三日月が窓から見えた。それを鼻で笑い流し、急ぎのメールやらの返信をする

「ごめんよ、海斗ちゃん」

『気にしなくていいですよ』

目の前に座っているのは、英語が心配だから着いてきて欲しいという原因の伊部さんだ。英二が高校の時の棒高跳びの取材で出会ったと言っていたが、年齢に似合わず少し老けている

「海斗ちゃん、本当に良かったの？アメリカに同行するの」

『構いませんよ。特に何かやることもありませんでしたし、仕事の方は私がスマホやパソコンのパスワード使ってちょっとするぐらいで終わりますから』

「さすが実業家…」

最近は株もやり始めたおかげで、金に困ることは特にない。…あぁ、心配事というかなんというか…やらないといけないことを済ませてないのは確かだった

(校舎の掃除…確か、来月の当番代わってもらったっけ)

旧校舎の掃除を代わってもらえたのは良かったが、埋め合わせがデパ地下の高級店のお菓子だのなんだとのふんだくろうとしてくる元クラスメイトに少し呆れながらもちゃんと贈ることは偉いところだろう