強者の首を狩れ【BANANA FISH】 (ページ29)

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『お前に、何がわかる』

私たちの気持ちも、先生の気持ちも、お前らに何がわかる

ユラリと刑事さんから退いた後、『あんたは私をそんなに人殺しにしたいらしいな』と取調室のドアの方に歩いていく

『好きにすればいい。だが私は殺ってない。私が人を殺したっていう証拠がないんだからな』

「貴様…ッ！」

『まあ、私が人を殺したとしてもヘマはしでかさないさ。じゃあね、おっさん。一生低給料で頑張んな』

バタンと強めにドアを閉めた後、そのままスタスタと歩いていく
コツン、としばらく歩いた後立ち止まり窓の外を見上げる
まだ朝7時程度。見えている月はうっすらと白く姿を宿している

『………………………………』

強くあれ

自分に何ができるのか

いつまでも考え続けろ

「海斗!!」

『！』

名前を呼ばれて窓から後ろに目を向けるとチャーリーが駆け寄ってきた
体をゆっくりとそちらに向けると、「大丈夫か？」と聞いてくる。大丈夫？なにがだ？

『大丈夫さ、気にすることない』

「でも…だな」

『なにさ、警察様は一般人に気を遣ってくれるの？』

「海斗…」

『…もう、放っておいてくれ。あんたらに突かれるほど、あんたらと共有したくない大事な思い出なんだ』

顔を背けて髪の毛で顔を隠すようにする
これで隠せてるかなんて聞かれたら答えに迷うが、隠せてると信じたい
パーカーのポケットに両手を突っ込み、壁にもたれて天井を見上げる

『……あんたら』

「「？」」

『超生物のこと、どう思った？』

純粋に気になったことを素直に聞いてみると、彼らは少し戸惑っていた
地球を破壊しようとした超生物は危険そのものだと政府が発信したんだ。そりゃその根強い考えが頭の中にのめり込んでいくだろう

変わることのないあの発言、それを正そうと奮闘したもののそれが届くことはなかった
だが、少数の人間に信じてもらえることができたことだけでも救いであることには変わりなかった

返ってくることのない質問の答えに、それが答えなのだと理解するには数分もいらない
ただ、どう思おうと私たちがわかっていればいいのだということは変わらなかった

目を固く閉じた後、『わかった…』と静かに言う
思った以上に悲しく寂しいその声にチャーリーは、「あ、あの…」と口を開いて頭の後ろに手を当てた