6話 強くあれ ページ26
「…クソッ！放せッ！」
強引に連れてかれるアッシュを眺めながら『こりゃ…詰んだな』とタラァッと口の端から流れ出る血を手の甲で拭いとる
うわ、べったりじゃん
「触んなッ…このッ！」
よく頑張るな〜。なんてことを思いながら、自分が拘束されている結束バンドをぼーっと眺める
結束バンドを簡単に外すやり方は確か…靴紐で擦り合わせたら摩擦で切れるってカルマが嬉々として語ってたな…
自然な流れでその場にしゃがみ込み、自分の靴紐をスルスルと慣れた手つきで解き、そのまま口と指を器用に使ってブチリと結束バンドを外した
外したことがバレないようにしていると、外から喧騒が聞こえてきた
「オーサー出てこい！裏切り者ォ！」
「アッシュ、どこだ！」
あぁ、やっときたか。解いた靴紐を靴に手際良く戻した後、男たちがバタバタとしているのを眺める
こりゃ蚊帳の外とやらになっているようだ。よし、この隙に逃げ出してやろう
殴られた時にぐしゃぐしゃになったタバコを取り出してライターで火をつける
他人事だって？他人だからな
「こんなに楽に死なせてやるつもりじゃなかったがな」
ハンプティダンプティがアッシュに銃口を向けている時、「アーーーッシュ！」というスキップの声が聞こえてきた
それが後ろから聞こえてきたので、無意識に顔をそちらに向けると、「やべェ！」と言う声も聞こえて来る
ﾊﾞﾝｯ！
ﾊﾞﾝｯ！
『…がっ…！』
脇腹と肩に掠めるように飛んでいく銃弾と、痛みがピリッと走った
撃たれたと理解するには申し分ないほどの痛みだった
「おい！」
貫通したのではなくかすり傷なので特に心配する必要はないが、脇腹よりも肩の方が痛い
というよりも、これは良くも悪くも英二が涙流してギャン泣きだろう
「海斗ちゃん！」
『だ、大丈夫』
抱き起こされて自分の肩を押さえながら答えると、駆け寄ってきたアッシュがみるみるうちに顔色を変えて、ハンプティダンプティに顔を向けていた
「…マービン、貴様ァ」
『おい、死んでないぞ』
まるで人が死んだような恨み方だな。と冷静に突っ込むも、彼は聞く耳を持たずして来るまで逃げていくハンプティダンプティを怒りのままに追いかけ、車に乗り込んでその後を追いかけて行った
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2021年10月19日 11時
