強者の首を狩れ【BANANA FISH】 (ページ24)

今日:20 hit、昨日:20 hit、合計:15,819 hit

5話飛べページ24

「頭が本当にイカれちまったのか？」

『英二はこのくらいの高さ、飛べるさ』

ザクザクと地面に穴を掘りながら答えると、英二は「でも、姉さん！」とまだ迷っている

『日本じゃ、これより高いの跳んでただろ？大丈夫、できるさ』

「それは…そうだけど」

「馬鹿な真似はよせ！そんな腐った水道管、折れたらそれっきりじゃねーか！」

「そーだよ！マットがあるわけじゃねーんだぜ!?」

『確かにな。競技とは違う。向こうに都合よくマットがあるわけじゃない
けど、このまま皆殺しになる選択肢を選ぶのか？』

「「！」」

『どうせ死ぬんなら、なんだってやってやる覚悟を持て。その瀬戸際に立ってる。いいか、世の中いつだって理不尽だ！』

平等、不平等、幸福、不幸、そんなものいくらだってぶつかって来る
それを乗り越えていけるのが人なのだ

「どうせ死ぬんなら…」

『………』

「なんだってやってやらぁ！」

覚悟を決めた英二は腐った水道管を持って後ろに下がっていく
アッシュとスキップはまだ無理だと覚悟しているらしいが、英二の本当の力はこんなもんじゃない

『後ろは気にするな。前だけを見て、飛べ』

「うん！」

深呼吸をする英二を一瞥した後、『殺せんせー…頼む』とオートマチックを片手で持ちながら「いたぞ！」という声の方向に銃口を向ける

『英二を、頼む…』

英二が最後まで飛べるために集中を切らさないように、走り出した英二がガンッと穴に棒を突き刺してそのまま飛び上がる

『いけ、英二!!』

地面を蹴って飛び上がった英二は、ふんをりと宙に舞い上がった
あとはもう、祈るしかない。飛び上がったのと塀の向こうに行けた確認が取れた途端にトリガーを引いた

バンッ、バンッと足元に銃弾を着弾させてこちらに来させないようにする
どうにかしてスキップたちも逃がしてやりたいが、E組1人だけでもいればなんとかなっただろう

ガチガチとトリガーを引いても銃弾が飛んでいかないのに舌打ちをし、スキップの方に走り出す

「えっ!? 海斗ちゃん!?」

『英二!!! 受け取れーッ!!!』

「スキップ！」

ブオンッという風を切る音とともに舞い上がったスキップは、そのままふんわりと塀の向こうに飛び上がっていく
「うわあ！」という声と「姉さん！受け取った！」という声と同時に『行け！』と叫ぶ

『イーストリバー3番埠頭!!』

居場所を叫びながら