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「……話がある…あんたにだけ」
タイミングよく言ったアッシュに、スルリと背後に回って確実に意識を刈り取る姿勢になるために身構えるように壁に背を預ける
極力息をすることなく、ただ気配を消して空気と同化する
「いいとも…お前ら、向こうへ行ってな」
「おい、まさか奴を助ける気じゃ!?」
「誰にものを言ってるんだ？俺の言葉は、パパ・ディノの言葉だぜ？」
また、ディノという言葉。どこで聞いたんだ？
頭を悩ませまくりながら、音もなく天井のヘリにつかまり、宙ぶらりんになったのを勢いよく足を上げて引っ掛け、プラーンと上半身を下に下ろす
空中ブランコで相手と腕を取り合うあのポーズだ
「ちくしょう、騙しやがったな！」
「おい、楽しむのはいいが、仕事は」
「わーってるよ、さっさと消えなって」
重い扉が閉まっていくのに施錠音は聞こえない
しめしめ、と唇をペロリと舐めとる。ポケットに入れていた黒手袋の革手袋を装着すると、オッケーと両手で大きく丸を作る。合図を送ると、アッシュはゆっくりと目を閉じる。それが了解の合図だ
「で？話って？」
幸いにして、ハンプティダンプティは英二とスキップ、私には興味がないらしい
おかげで、こうやって背後を取れたんだありがたくて涙が出るね
アッシュは自分の胸元からゆっくりと手を這わせ、首の傷を思わせぶりに撫で、足を意味ありげに内側に倒す。ビッチビチも驚きのテクニックだ。マニアックすぎて見習うね〜
「…ギャラリーのいるとこじゃ、やだな
2人だけになれるとこ、連れてってよ」
(ブハーーッ！)
笑いが堪えきれずに腹筋が捩れるほどに口元に手を当てて笑っていると、ヒクヒクとアッシュの口角が引き攣っている
悪い悪い、と手を振るとさらに怒ったのかちょっと不機嫌そうになるが、表情は変わっていない
「クックックッ…いいとも」
「あばらが折れちまったらしいんだ。手、貸してくれない？」
さあ、正念場だ。英二、スキップ、離れてろよ？
目配せで下がれと顎を突き出せば、2人は怯えているフリをしながら奥へと距離を取る
いい子だと笑いながら、アッシュへと近づく男に向かって、腹筋で体を起こして両腕でヘリを掴み、全体重を腕で支える
「そいつぁかわいそうになぁ…。あとでちゃんと、手当てしてやるぜ…」
『自分で傷つけといて、よく言うぜ…』
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作者名：サッカーバカ
| 作成日時：2021年10月19日 11時
