強者の首を狩れ【BANANA FISH】 (ページ16)

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3話埠頭ページ16

2、3分だけ走って行き先を決めたのか、『振り落とされるなよ〜！』と大きな声で叫ばれた
風のせいで聞きにくいが、お姉さんがスピードを上げたことに気づいて慌てて振り落とされないようにしがみつく

「おい、行き先は」

『イースト・リバー3番埠頭』

「！」

『今からぶっ飛ばしたら5分ぐらいで着くけど、腹くくんなよ』

「は？」

『法定速度破るから』

グンッと勢いがさらに増した。俺でも出したことのない速さに歯を噛み締めてその速度に耐えるばかりだった
女が出すようなスピードじゃない。常人じゃない、イカれてる

「日本人ってのは、行動が大人しいんじゃないのか!?」

『そりゃ一部の人間だね!! 私は当てはまらないね!!! 最も、バイク好きな友達もったらこうなるね！』

「う、わっ！」

もし、この人の後ろが俺じゃなくてショーターだったら喜んで「もっと飛ばせ〜！」とか言ってるんだろう
だが生憎こんなにスピード上げられたら流石に青ざめる。ハンドルミスったら大事故だぞ…！

ｷｷｨｨｨｨｲｯ！

「あんた…ホント、法定速度ブチギリすぎだろ!!」

『それでも3分で着いたでしょ？』

クツクツ笑いながらヘルメットを取ったお姉さんは、俺にそう言うと人気のないイースト・リバー埠頭を見つめた

『…………………なるほどな。律、鷹岡の目撃情報はどこで止まってる？』

《現在、羽田空港で止まっています。ニューヨークへの直行便がその時間帯にはなかったので、経由する可能性があると思われます》

『なら、そっちの対応はまだでいいってことか』

お姉さんはスマホと何か話した後、それをジャケットの内ポケットに仕舞い込むと、『行くよ』と歩き始める
スキップたちを押し込めて走り去っていた車を一瞥して、お姉さんの後を追いかける

『………………あぁ、匂いするな』

「？」

『豚の匂いとせこい人間の匂い』

頭の後ろに手を当てたお姉さんは、『そーいう匂い、よーくわかるから』と俺に振り向くことなく口を動かし歩き始める
慌ててその後を追いかけていくのに、お姉さんの前に立てない。立つことを許さないのだ

『さて、我がいとこくんとスキップ救けて完全クリアして帰ろうか』

まるでゲーム感覚で言っているこのお姉さんは本当に何者なんだ？