強者の首を狩れ【BANANA FISH】 (ページ12)

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「わあ！すごい…ずっしり重いや。へぇー…姉さん！姉さんに持たせてもらったのとおんなじだよ！」

「は？」

『そりゃよかった』

バッと店内の人間が私を見るが、そんな視線を気にすることなく思い出す
あれは確か、英二が遊びにきた時にうっかりしまっておくのを忘れたモデルガンだった
重りをつけていたから本物の銃と同じぐらいの重さにして、手首の強化をしていたのもあったな

モデルガンだし、中に入ってるのはBB弾だから人を殺すようなことはなくても、地味な嫌がらせには十分だろう
ひとしきりに銃を愛でた英二は、銃を返した

「ありがとう、大事なものを。あの、一つ聞いてもいいかな」

「なに？」

「人を…殺したことある？」

『…………』

英二の口から出たのは純粋な質問。腹を抱えて笑っていた自分の表情がゆっくりと固くなっていく気がした。いや、固くなっていく
ゆっくりと英二に振り返れば、あの子は賞賛も批判もない、真剣な表情で彼を見ている
そんな彼がどんな顔をしているのかこちらからは見えない

「…あるよ」

ただ、ひとつ…静かに答えた

「へぇ…やっぱり…そうかぁ」

『………………』

人を殺したことのある人間を見るのは、これで何度目だろうか
この子は私が出会ってきた人間とは違った人種なんだろう。依頼というわけでもなく、ただ純粋に人を殺したかったから殺したのか、それとも…己の身を守るために殺したのか…今まで出会ったことのない種類だ

「…ガキだな、あんた」

「え？」

『度胸があるだけのな』

「姉さん」

彼の言葉に続いて英二を褒めるように言ってやるも、彼はそれが褒め言葉ではないと受け取ったのか、頬を膨らませてジトリと睨む
大きな目で睨まれても全然痛くも痒くもない

英二のおかげなのかよくわからないまま、彼は取材に対してOKを出した
英二のさっきの度胸が気に入ってのか、スキップは英二を連れてテーブル席で話している

適当にスマホから手を離してカウンターの上に置いてタバコを吸いながら水を飲んでいると、「海斗ちゃん、そろそろ行こう」と伊部さんが声をかけてきた

『あ、はい』

タバコを灰皿に押し付けて火を消し、スマホを手に取って財布からビール代を出しておく

『ビール、ありがとう』

「おう、また来いよ」

『時間があればね』

こんなところ、取材以外で来ないだろう
ポケットの中のタバコが音を立てる