元殺し屋はヒーローになる28 (ページ15)

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「私の他に…声をかけられていた人間が…数人」

『レディ…応急処置を!!』

「なァ…後輩くん…私は…心が保たなかった…キミは…なんでそんな顔でいられる…」

救急セットを取り出してレディ・ナガンの体に薬をぶっかけていく
大雑把な応急処置でひどい場所には薬を塗りたくって包帯を巻き始める

「支えてくれる人がいた。俺、楽観的なんす」

「デク!! こいつだけでいいんだな!?」

『……お兄ちゃん』

炎司さんに抱えられて現れたのは、両腕がなくなった壊れたお兄ちゃんだった

私のことに気づいていない

「…おい、話が違うぞ。捕まったじゃないか
オヤジとハナに会わせろ…!! 俺にはもう、オヤジとハナしかいないんだ。オヤジに、謝りたい……!!」

「治崎」

「黙ってろ、病人め。俺はその女に」

「エリちゃんに、青子さんに、してきたこと覚えてる？」

「壊理…破無…ああ…そうだ、壊理と破無がいれば………！」

「謝りたい人がいるんだね」

『緑谷…』

「その気持ちを、もしエリちゃんと青子さんに向けることができたなら…レディ・ナガンとの約束を、僕が引き継ぐよ」

ボロボロな姿の緑谷。そんな彼の隣に立つように私は立ち上がってお兄ちゃんに向き直った

『ねぇ、お兄ちゃん…私たち、なにから間違えたんだろうね…』

「破無」

『壊理ちゃんと出会ったこと、オヤジ様と出会ったこと、拾われたこと、誘拐されたこと、私は……』

「破無」

『私はあんたの妹として生まれてきたことを、何度も後悔して悔やみ死にたいと思ったよ』

「！」

『あんたは何度も何度も私を犯そうとした!! 実の妹に！血の繋がった妹に！こんな狂ったクソ兄貴と血が繋がった家族であることに吐き気がしてた!!!
何度もぶっ殺してやろうと思った!!! でもそうしなかったのは』

“お姉ちゃん！”

『私の可愛い、妹(エリちゃん)がいたからだよ
あの子がいたから私はあんたに手を上げることも出すこともしなかった。少しでも、自分の行いが悪かったと思うなら…』

炎司さんに捕まっているお兄ちゃんは「悪かった！破無!!」と私に投げかけてくる
壊れてしまった兄を目の当たりにして、どうすればいいかなんてわからない

ただ、あの頃のように優しくて強い兄はいないことだけはわかった