1-3 ページ8
居酒屋から出て佐々木をおぶりながらこれまでのことを振り返る
コイツは、萩原が死んでからも俺を呼び止めてくる
そりゃあ、俺だって焦っていないわけじゃない。コイツが悔しいのも知ってる
『ん…あ、れ…』
「起きたか、佐々木」
『…ぁれ、松田…?なんで』
「班長から連絡あったんだよ。お前の家知ってるの、俺と萩原だけだから」
『…タクシーで』
「酔っ払ってる女1人タクシーで帰すわけないだろ。刑事の給料の安さ舐めんな」
『…………迷惑を、かけたな…すまない』
舌足らずのような子どものように言う佐々木に「おい」と呼びかけると『松田』と呼ばれた
『おいていかないでくれ…』
「…あん?」
『萩原のように、いかないでくれ…仲間を失うのは、もう嫌だ』
微かに震えている。それを感じ取って俺は「バァカ」とでっかい声で言ってやる
「死ぬわけないだろ」
『!』
「散々これまで危ねェ橋を渡ってきたんだ。爆処理に配属されてからもな。今更だろうが。それともなんだ?俺が簡単にくたばると思ってるのか?」
『そんなことは…ない…松田はすごい奴だ…でも、私は…もしもを考えるととても怖くなる
松田だけは、失いたくないんだ…』
(え?)
『なぜだか、わからない…お前を失うことがとても怖いと感じている…』
酔っ払いの戯言だと聞き流せばいい。今更こうやってデレられたって、どうしてやりゃいいのかわかんねえ
ただ、言えるのは
(それをシラフの時に言えっつーの)
さっきの言葉を最後に俺の背中で寝始めた佐々木に心の中で突っ込んだ
電車に乗り込み、座席に座って自分の肩にもたれさせれば、自然とすり寄ってくる
「バカだな…お前を置いて死ねるわけねぇだろ」
認めてやるよ、ハギ
俺はコイツに惚れてる
「よォ、佐々木」
『松田…昨夜はすまなかったな…』
「お陰様で俺の腰が死ぬかと思ったぜ」
『む…おぶっただけで腰を痛めるのは、歳なんじゃないのか?』
「てめェ…。それより、昨日のこと覚えてるのか?」
『え?松田に何かしたのか?それなら…』
「いや、覚えてねえなら構わねえよ」
『……?』
覚えてたらきっと、コイツはまた憎まれ口や皮肉を言って誤魔化すだけだろうな
89人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:サッカーバカ | 作成日時:2022年4月25日 10時