17話 フルヤ ページ46
ー月参寺ー
月参寺は渋谷にあるとは思えないほど緑豊かで静かさに包まれていた
寺の一画にある墓地はそれほど広くなく、萩原研二の墓にはすぐに辿り着いた
墓地に植えられた木からは黄色い葉がはらはらと落ちてくる
「はいはい、彼らのことならよーく覚えております」
穏やかな顔をした住職は佐藤と高木の聞き込みにすんなりと答えてくれた
「彼ら?」
「松田くんは1人で来てたんじゃないんですか?」
「ええ。数年前まで5人で来られていましたよ」
「5人!?」
「皆さん、萩原さんの同期だと言っておられました」
「3年前にきた時のこと、覚えていらっしゃいいますか?何時ごろに来たとか」
「毎年午後の3時過ぎくらいだった思います。ただどういうわけか、最近は参拝される人数が減っていき、去年はお一人に…寂しい限りです」
「その最後の1人の名前はわかりますか?」
「名前は確か…そう!フルヤさんという方だったと思います。あぁ、そうそう。その方ととてもお綺麗な方が一度2人だけで来たことがありましたね」
「「えっ!?」」
フルヤという人間ともう1人いたという住職に「もしかしてその人…」と、佐藤は佐々木の写真を見せた
「この方なんじゃ」
「えぇ、そうです。とてもお綺麗な方でサングラスをかけて来られた時は驚きました」
「サングラス…松田くんのだわ」
住職の言ったもう1人が佐々木だというのはわかった。だが、フルヤとは一体誰なのか…佐藤たちは佐々木の生家へと向かった
ー佐々木家ー
「姉が、ですか?」
「えぇ。フルヤという方と一緒に萩原研二さんのお墓参りに行っていたんですが」
「なら、あの日かな…」
「あの日?」
「はい。姉は7日の日は松田さんとデートに出かける予定だったんですけど、あんなことがあって…14日の日に確か萩原さんと松田さんのお墓参りに行くって」
「それって、1人で?」
「いえ、フルヤって方と」
「その人、どんな人かわかりますか?」
「えっと…」
「教えれないんだ、佐藤刑事」
佐々木梨花の妹、慧子が対応している後ろから顔に包帯や絆創膏を貼っている秀鳴が歩いてきた
「秀鳴!じっとしてなきゃダメじゃない」
「大丈夫だよ」
「佐々木くん、教えれないってどういうこと?」
「降谷さんと、約束したんだ。降谷さんのことは、絶対に誰にも言わないって」
89人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:サッカーバカ | 作成日時:2022年4月25日 10時