元殺し屋はヒーローになる13 (ページ47)

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「こ、来ないで！」

ブワッと俺の顔の横から何かが出たと思ったら幻獣だ
幻獣に驚きながらも、素晴らしい“個性”だと思う

「く……く、来るなったら！」

「幻なのは分かっている」

「活真だけじゃなく、真幌までバレてる…!?」

敵に噛みつこうとする幻獣は、突如吹いた風によって消えてしまう
愕然とし、俺の服を強く掴む真幌

「お、お姉ちゃん、カルマ兄ちゃん」

「大丈夫…絶対、俺が守るから」

敵が近づいてくるたびに怯える2人を守るために頭を働かせる
俺の頭でどうやって勝つ？いや、勝つとまでは行かなくても、足止めや時間稼ぎぐらいはできるはずだ

ギュッと活真と真幌を抱きしめる力を強める
一瞬で家を壊してしまうような力を持つ敵だ。俺が相手になるなんて無理だ。相手は「死神」以上の力を持つ

なんたって“個性”持ちだ

虚しい抵抗なのはわかる
けど、そうするしかない。俺だって立派なアサシンだ

やるしかない

「……その子を渡せ」

「やだね…」

敵が俺の近くまで歩いてくる
渡せと言われて、素直に渡すほど俺は馬鹿じゃない
善悪の区別ぐらいできるし、こいつに渡したら、ヒーローに憧れている活真の“個性”が奪われるのはわかる

馬鹿なことするよりも、俺は…

『やるじゃん、ヒーロー』

本物のヒーローが来るのを待つだけだ

ふんわりと浮いた体から、真幌と活真が離れたと思ったら、緑谷が2人を抱えていた
俺は俺で、青子に抱き抱えられてる

「デク！」

「青子姉ちゃん!!」

『よーう、2人とも！無事で何より！それから…よく頑張った』

きっとこの2人にとっての1番のヒーローは青子なんだろう
2人は青子の笑顔を見ると、安心したのか潤ませた瞳からポロポロと涙を流した

「つーか、なんなのアイツ」

『ああ…』

俺たちの方を見ている敵を見つめ、俺が青子に聞けば、青子本人も敵を一瞥し、また前を向いた

『もっとも会いたくない…宿敵(コイビト)ってとこかな』