元殺し屋はヒーローになる13 (ページ38)

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キョロキョロとあたりを見回してるし、あの弟らしき男の子はいない

「ねぇ、何してんの？」

「キャッ!?」

上から声をかければ、小さな悲鳴と共に、「な、なに！」と俺に気づかない

「こっちこっち」

「！」

木の枝から飛び降り、女の子の前に立つと心底驚いたように地面に尻餅をついていた

「…大丈夫？」

「だ、いじょ、ぶ…」

手を差し出せば、素直に手を取った女の子の名前は真幌

あの弟は活真というらしい

「お姉ちゃーん！」

遠くの方から活真が駆け寄ってくると、真幌は心底ほっとした顔になっていた

「どこ行ってたの、活真」

「デク兄ちゃんのとこ」

「！」

「昨日のこと謝ってきた」

「……どうして？」

「………僕、お父さん好きだよ
お父さんのようなかっこいい人になりたい
でも……でも……！」

何かを決意したような顔つきの活真が、何か伝えようとしたその時、ドガガッと大きな衝撃音がした

「な、なに!?」

「危ないからこっちきて！」

2人の腕を引いて、腕の中に閉じ込め、様子を見るために少しだけ身を乗り出すと目を見開いた

猛スピードでやってきたフェリーが防波堤を破壊しつつ、漁港に入ってくる

突然のことに漁師たちは唖然としていた

「防波堤が………」

「なんでフェリーがこっちに？」

暴走するフェリーは躊躇することなくさらにスピードをあげて漁港へと向かってくる

このままでは、漁師たちにぶつかってしまう

「2人はここにいて。身を隠して待機して」

そう言って、俺は柵に足をかけて飛び上がり、逃げ遅れた漁師たちを引っ張って安全な場所まで避難させた

「キメラ、マミー、邪魔をされたくない
陽動を頼む」

「やり方は？」

「好きにしていい」

「承知」

「スライス」

「わかってるわ」

敵が三方向に飛散すると、真ん中の男は振り向くことなくまっすぐ島へと上陸していく

停泊していた漁船の上に立った女は、髪を長い針のようにし、鋭い雨のように周りの船に降り注がせて行った