【HQ】高校バレー界の問題児とは

十九話 ページ20

電話が終わったあとは、部屋に戻るだけだったので少し廊下で涼んでいくことにした。
夜といえど、今は夏真っ盛りの7月下旬。なにもしなくても額を汗がつたう。

現在22時4分。
まだ寝る時間でもないし、なにをしようか。

先輩たちの恋愛事情につっこんでみようか。いやでも、さすがに私でもそれは罪悪感がある。

部屋で枕投げ、というのも悪くは無いが、監督にまた怒鳴られそうな気がするのでやめておく。


夜風が頬を撫でる。
なんか、スローモーションに見える。すべてが。


忘れてしまいたい記憶が、蘇る。



『そっか、影山くんもそうだったのかぁ。』



少しだけ、嬉しかった。自分と同じようなプレイヤーが私の他にいるとは。

いや別に、彼を貶している訳では無いけれど。



『でも今は、そんな風には見えないなぁ』


実際、五色に言われなければ気づかなかった。
それは誰かにきっかけを貰って、自分を変えたということ。


『そのきっかけは、日向くんかな？いっつも影山くんって日向くんを、太陽を見るみたいな目で見てるからさぁ。人生変わるよね、出会いって。』


声が少し大きくなってしまったが、恐らく誰も廊下にはいないだろう。いたら音のひとつくらい聞こえる。


『私もきっかけを貰ったんだ。チームプレイってものを初めて知ったかもしれない。』


自分に手を差し伸べてくれたあの男を思い出す。

彼がいなかったら、私は今でも自己中心的なプレーを続けていただろうか。いや、バレーボールをやめてしまっているかもしれない。

今はこんなにも、大好きなのに。













『元気してるかなぁ、及川さん、だっけ。』









[俺の相棒が言うにはね、”バレーは6人で強い方が強い”んだって。
君も、チームメイトは大切にした方が良いよ。]

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