“元”杉沢第三高校一年担任教諭は災厄を食い止めたい。（5）【呪術廻戦】

144.封印 ページ16

消えゆく呪霊の残灰が顔にかかるのを手で払いながら、私は深く息を吸って心を落ち着けた。


(……まさか、こんなに早く役立つ時が来るなんて)


鞄の奥から取り出したのは、札が貼られた古めかしい木製の小箱。

中には指を安置させる窪みと、漏出する呪力を抑え込む効力を持つ呪符が入っている。


もしもの為にと私が常時携帯していたのは、あの日虎杖くんが百葉箱で見つけたという封印箱と同じものだ。

すぐに高専で保管する必要があるのは変わりないが、これで呪霊を引き寄せる副作用は格段に落ちる。


こんな危険な物と起きがけに対面させるなんて、悪質な悪戯にも程がある。


警戒しつつ剥き出しの指を手に取り札を巻き付けて、箱に入れてから鞄に戻した。

呪物の処置はこれで良し、問題は吉野さんの容態だ。


(動脈が傷ついてるせいで下肢の出血が酷すぎる……腱と踝の骨までやられてるな)


とにかく患部の止血と固定だ。

浴場の衣装ケースにあったタオルを数枚拝借し、傷口を圧迫して血を止める。

ソファの下に置かれていた昨日の新聞を添木代わりにしてタオルに巻きつけ、傷口が開かないよう固定させた。


三ヶ月前を思い出す。

一生忘れられないであろう出来事が一度に起こったあの日、私は無力で何も出来なかった。


今度こそ、必ず救ってみせる。

145.焦燥→←143.圏外

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す