“元”杉沢第三高校一年担任教諭は災厄を食い止めたい。（5）【呪術廻戦】

140.方便 ページ12

「またな順平、あれの続編出たら今度は映画館で見に行こーぜ！」

「うん、気をつけてね」

『色々とお世話になりました』


玄関先まで見送ってくれた吉野くんに虎杖くんは片手を振り、私は軽くお辞儀する。

門を超えて階段を進み、道路に出た辺りで私は虎杖くんに話しかけた。


『虎杖くん。吉野くんの事、どう思いましたか？』

「どうって、普通に良い奴だったよ？ 話してたら楽しいし、映画とかめっちゃ詳しくて」


今日の事を振り返る虎杖くんの表情は明るげだった。


だからこそ腑に落ちない。何故彼が“ツギハギ”と繋がっているのか。

彼が映画館に居たのは偶然だったとしても、呪いを視認できるようになった訳はまだ分かっていない。

私達に明かさなかったのはツギハギの事を隠蔽する為か、それともその強さに怯えて私達を庇おうとしたのか。


どちらにせよ、高専関係者2名が彼の自宅に上がり込んだという事態にツギハギがどう出るか分からない。

七海さんにはメールで連絡済みだ。監視は明日も続くことになるだろう。


『……虎杖くん、私ちょっとこの辺りで寄りたい店があって。もうしばらく車を使いたいんです』


明日にも備えて、虎杖くんは家に帰した方が良いな。


『さっき電話でタクシーを呼んでおきましたので、今日はそちらで帰宅して頂けますか？』

「え、寄りたい店って？」

『………………えー、と。武蔵野市のランジェリーショップです』


またも建前を暴かれそうになったが、なんとか持ち堪えて追及しづらい話題へと転換する。

少し気まずそうに目を泳がせて了承する虎杖くんに料金を渡してタクシーに乗せ、先に寮へと帰宅してもらった。

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