“元”杉沢第三高校一年担任教諭は泰然自若でありたい。（3）【呪術廻戦】

79.大切 ページ15

不安と戸惑い、喜びが交互に訪れ、私は恐る恐る決定的となる質問を返した。


『………私は、なれてますか？ここに居る人達にとっての“大切”に』

「そうじゃなきゃこんな話をしようと思わないよ。……………まぁ、君に誰かを頼って欲しいと言うよりは、僕が君に頼って欲しいんだけどね」


前半はきっぱりと言い切ったが、後半に入るにつれ何故か徐々に五条先生の声は小さくなっていく。心なしか顔も少し逸らし気味になっているが、それでもちゃんと私の耳には届いていた。


(…………あれ？)


話を聞き終えると同時に、自身の鼓動がいつもより数段早くなっていて、顔に血流が集中していたのを知覚した。

さっきまで会話に没頭していて気づかなかったけど、いつからそうしていたんだろう。


(………？何かな、この感じ……？)


風邪の症状と似ている気もするが、まだ知恵熱は出てない筈なのに。

完全なる未知の感覚に少し自問自答を繰り返して、納得のいく答えを導き出す事に成功した。




そうか、分かった。

これは、紛れもない………



──────得もいえぬ、幸福と敬慕の念ってやつか……！！


心の中で言葉にするとその響きに更に気分が高揚した。それも無理の無いことだ。

確かに五条先生は情緒と為人に些か難ありだけど、その圧倒的な実力と強者故の達観ぶりには目を見張るものがある。

そんな彼に生徒たち同様に気遣われるなんて、光栄ここに極まれりという事だろう。


成る程、それで間違い無さそうだ。

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