副担任を落としたい。【五条悟】

6.報告内容 ページ8

その後もへばり付く五条先生から逃れるように自室に戻り、コーヒーを淹れて封筒を開けた。

つい先日の内容から数週間前のものまで、担当範囲は実に幅広い。

他の特級術師は揃ってin海外なのも加えて、最高戦力は文字通り飛び回っている。


(んーー………、まぁ報告っちゃ報告だけど……)


その多忙さを知っているから何も言わないけど、まぁ素っ気無い。色紙とかによくある一言コメントより余程味気無い。

このパターン毎度の事だし、別にわざわざ口出しするのも難儀かもしれない。

ただ、一級ないし特級呪霊討伐の報告に“雑魚だった”なんて感想文を書ける人などそういないだろう。

畏怖するやら感心するやらで、くいっとコーヒーを煽った。


『───よし。そろそろラストかなっと』


カフェインで少し頭が冴えたお陰か、その後の業務は着々と進んだ。受け取った時と比べて大分薄くなった封筒の中身を手で探る。

別に署名が必要な書類なんて無かったけど、五条先生の思い違いかな。


それより、個人的な意見として改善して頂きたいのはホシの似顔絵の方だ。

未登録の特級二体の時もそうだったが、何で画材がクレパスなんだろう。


絵自体はデフォルメが効いてて可愛いと思う、けどほかの書類に擦れると色移りするんだよね。

五条先生は「色の数多いから」って言ってたけど、ならせめて次から色鉛筆使ってもらおうかな。


『……ん？ あれ、何かな？』


コーヒー片手に封筒の中にある1枚の資料に触れたとき、ふと違和感を覚えた。

紙の質感が今までのそれらと少し違う。
心なしか用紙のサイズも若干異なっている。


ずるっ、と大きいサイズの茶封筒に入っていた謎の書類を引っ張り出し、くるりと表面に翻した。



…………あれれー、おかしいな〜？？


某探偵少年はこんな死んだ目で決め台詞を言わないだろう。

ともかく、なんか滅茶苦茶どこかで見たことがある記入用紙だ。


主に左半分だけ不自然に埋まっていて、右半分が綺麗に真っ白。


ぎ、ぎ、ぎ……、と、錯乱の中で恐る恐る視線を動かした。




“婚姻届”




左上に書かれていた三文字を確認した瞬間、思わず私は口に含んでいたコーヒーを派手に吹き出してしまった。

私の前方という射程範囲内にあった例のブツは甚大な被害を被る。


用紙を完全にダメにしてしまった私を責められるのは、区役所で窓口の受付を担当なさってくれたであろう見知らぬ職員さんくらいだと思いたい。

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