17.綺麗 Side:五条 ページ19
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再び手をかけた扉を押し開け、驚いてこちらを凝視する彼女の腕を掴んだ。
『ご、五条先生!? 何でここに…』
「硝子、ちょっとこの子借りてく」
「ああ。ヤケ酒なら付き合うぞ?」
何気にフラれる前提かよ。てか僕が飲めないの知ってるだろ。
去り際に硝子から「お前の返事次第で日本の地図変わるから慎重になー」と手をヒラヒラ振られたAは、訳も分からずあたふたしていた。
──────
焦りと、羞恥心と、少なからずのムカつき。
思いのままにAの手を引き、ずかずかと足を進め外まで出る。
彼女は自分たちの会話を僕がどこまで聞いていたのか知りそうだったが、先に口を開かせたくなかった。
ちょっとでも油断したら、その隙にするっとすり抜けられてしまいそうで気も休まらないんだ。
君がいつも通りの有耶無耶に持ち込む前に、弁明にも謝罪にも先んじて、どうしても言いたい事がある。
掴んでいた手を離して、軽くAの両肩に置き、逸らそうとする目を合わせた。
「好きだ」
一呼吸置き大きく見開かれた彼女の綺麗な目の中に、僕の姿が鮮明に映っていたのが、どうしようもなく痛快だった。
あぁ、やっぱり僕はこの子がいいんだなって、そう実感させてくれる。
いつしか君の全部が愛しいと、そう思うようになっていた。
最近、少しだけ僕らに見せてくれるようになったその笑顔も。
自分の事なんて二の次三の次で、他の誰かを真っ先に庇うその優しさも。
いざとなれば己の身も顧みず、呪いの王すら恐れないその芯の強さも。
凄く、綺麗な
『……………あっ……ぇ……』
突然の展開にAはキャパオーバーを起こしたようで、まだその真意までは上手く読み取れない。
呼吸の中に母音が混じるくらいの声量で、成立した文章どころか単語すら口から出てこない。
「……五条悟は、AAを愛してる。友達とか敬愛とかじゃなくて、恋愛感情の方で」
ちょっとオーバーなくらい具体的に、証明問題みたく丁寧に付け加えると、肩がビクッと痙攣したのが伝わった。
こんな時でもあまり表情には出さない彼女だが、瞬きの回数が跳ね上っている。
これくらいは言わなきゃ。
もう言い逃れはさせたくない。
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そす(プロフ) - マリオットさん» コメント感謝です! 現在リアルが非常に多忙かつアイデアが浮かばないので執筆活動が疎かですが、ご感想を頂けると毎度はしゃぎ回ってます! (2022年11月6日 13時) (レス) id: 4547e6e600 (このIDを非表示/違反報告)
マリオット - 初コメ失礼いたします!大好きです!!続いてほしいです!この作品に出会えて良かったです!!「第二人格は特級らしい」も全て読ませていただきました!本当にありがとうございました!!🙇 (2022年11月3日 11時) (レス) id: 4a1e7dbbbb (このIDを非表示/違反報告)
そす(プロフ) - 愛鞠_あいまり_さん» 大変遅くなりましたが、初コメントありがとうございます!! (2021年11月20日 23時) (レス) id: 4547e6e600 (このIDを非表示/違反報告)
愛鞠_あいまり_(プロフ) - 初コメ失礼します。需要ありますね!とりあえず一言言わせていただくとすきです (2021年10月5日 17時) (レス) @page34 id: 235ec261d4 (このIDを非表示/違反報告)
そす(プロフ) - 悠希さん» コメントありがとうございます! (2021年9月10日 20時) (レス) id: 4547e6e600 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そす | 作成日時:2021年8月5日 17時