23.脱走者 ページ25
「あぁそれから、恵も先戻っててくれる?僕これからちょっと用事がありそうだから」
「用事がありそうって……」
どこか矛盾したフレーズに訝しげな視線を五条に向ける伏黒だが、彼の調子に合わせていれば身が持たないのは長年の付き合いで把握済みのため、特に深入りせずその場を立ち去る。
五条は自身に背を向けて見えなくなる2人を見送り、再びベンチに浅く腰掛けた。
「……さて」
「もう出てきてもいいんじゃない?2人とも行ったことだし」
五条が独り言ちると、物影から覚束ない足取りの女性が現れる。
首には何重にも包帯が巻かれ、フックにかかった輸血パックと点滴の針が腕に刺さっており、格好は病衣のままだ。
彼女は力なく血色の悪い片腕をひらっと振った。
『ご無沙汰……ってほどでもないですよね』
五条さんの隣に腰掛けると、彼は呆れたようにため息混じりに話し出した。
「心配事が多くて眠れなかったのは分かるし申し訳無いけどさ、重篤患者が医者の許可無く病院抜け出してきちゃ流石にアウトでしょ」
「一時は心停止までいったらしいけど。硝子は明日あたりには来るハズだし、まだ安静にしてた方が賢明じゃない?」
のらりくらりとまぁ上手いこと言っちゃって……。いや、これは五条さんが正論か。
特に病院抜け出しに関しては割合10:0で私に非がある。……だけどだ。
『……私達が安静にしてる隙を見計らったら、足跡も残さずトンズラこくつもりなんでしょう?虎杖くんまでグルになって』
「あ、やっぱバレてたー?」
意図を見抜かれた割には五条さんの表情は曇るどころか、悪戯が成功した子供のように底抜けだ。
『隠すつもりも無さそうでしたが』
「まーね、実際無いし」
『…………』
(やりづらそー……)
飄々としていて心の内が一向に読めない。
糠に釘打ち、暖簾に腕押ししてる感触がする。
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そす(プロフ) - イナアレオリさん» 鬼滅の刃要素…? どのあたりでしょうか? なにはともあれお褒めに預かり感謝です! (2021年8月21日 21時) (レス) id: 4547e6e600 (このIDを非表示/違反報告)
イナアレオリ - なんか少し鬼滅の刃少し要素あるなぁ良いと思いますよ\(//∇//)\ (2021年8月21日 21時) (レス) id: 2e62a84241 (このIDを非表示/違反報告)
そす(プロフ) - さあさん» ご閲覧感謝です!! イベントは初参加だったんですが、さあ様が呪術廻戦に興味を持って頂けたこと、とても光栄に思います! 応援ありがとうございます! (2021年7月1日 0時) (レス) id: 4547e6e600 (このIDを非表示/違反報告)
さあ - イベントご参加ありがとうございます!!呪術廻戦はちょっと知ってるくらいだったんですけどこの作品を見て呪術廻戦をもっと知ってみようと思いました!私は紅茶もコーヒーも飲めないので夢主かま羨ましいです笑これからも頑張って下さい!応援してます! (2021年6月30日 16時) (レス) id: 7aaf2735e4 (このIDを非表示/違反報告)
そす(プロフ) - 麗さん» ご指摘ありがとうございます!修正しました、自分では全く気づけなかったので細かいところまで見ていただいて感謝です! (2021年4月17日 1時) (レス) id: 4547e6e600 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そす | 作成日時:2021年4月10日 16時