吸血鬼娘は日傘をさす3【ONEPIECE】 (ページ10)

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第百三話:心臓が叫ぶページ10

朱殷の色を持つ髪の毛が短く切り揃えられ、触覚だけが胸の辺りまで伸びている。左目を隠すような前髪の奥には、黄金の瞳があった。
中性的な顔付きは一件男女か区別がつきづらい。線が細く、尚且つダボついた白衣を着ているせいで余計に性別が分かりづらかった。

「......本来の姿」

Aが血を吸えば白髪に蒼眼となるよう、彼女の姿もアレが本来のもので普段は赤目黒髪なのだろうか。それともAが異質なだけで血を吸っても姿は変わらないのか。

知りたい事が山程ある。Aは日傘をもつ手を握り直し、深呼吸をする。しかし目の前の新緑が動くのをみて、引き締めた気分が一気に解かれた。

「＿＿＿ってゾロの坊や待ちなさい」

コツコツと迷う無く歩いていく後ろ姿に、頭が痛む。
ここで彼を止めなければきっと彼は傷つく。そう考えるだけで心臓が嫌な音を立てた。今までこんなことは無かった筈だ。

「ねぇ坊やお願いだから」
「＿＿＿約束したんだ、だから俺は行く。離せA」
「......」

きっと止まらない。ルフィと同じなのだ、荒れた時代でしか生きていけない獣。その中でこそ最も価値を表す人間。

掴んだ掌から力が抜けていく。ゾロはAに視線を寄越す事無く一人の男に向かって歩いていった。

「......恐怖って、こんなのかしら」

バクバクと心臓が嫌な音を立てる。生まれてこの方かは分からないが、こんな事初めてだ。少なくとも覚えているうちは。心臓が痛い。叫んでいる、何かを懸命に訴えている。

それが分からないのが、なによりも怖かった。何がAをそうさせるのか分からないことが。