第百二話:悪い予感 ページ9
びしょ濡れのジョニーとヨサクが、ナミは船を使い逃げた事を説明する。案の定の展開だ。
「ゾロ、ウソップ、すぐ行け」
「そうね」
「もういい船なんてくれてやる。あんな女もう追いかける必要イッ」
勢いよくAのブーツのヒール部分がゾロの足に食い込む。あ？と声を上げればAが眉間に皺を寄せゾロを見上げていた。
「坊や、あの船も、あの航海士も必要なものよ」
「そーだぞ！俺はあいつが航海士じゃなきゃ嫌だ！」
ゾロがAを見下ろし、ルフィに視線をやる。真正面からも下からも強い視線を向けられ、ゾロは折れた。
「わかったよ、世話の焼けるキャプテンだぜ。それと足どかせ痛ぇよ」
「ふふ、ごめんなさいね」
「ったく、おいウソップ行くぞ」
ヨサクとジョニーが自分たちの船を持って来る。四人くらいなら余裕だろう。
「おい、ルフィ、Aお前らは」
「俺はまだこのレストランでなんのケリもつけてねぇからヤダ」
「私は、ルフィひとりじゃ心配だもの。それに人手は別れた方がいいわ」
「気をつけろよこっちの事態も尋常じゃねぇんだ」
「ああ、わかってる」
「優しい子ね坊や」
「揶揄うな」
Aはゾロの掌を握った。皮が厚くて豆が潰れた後が幾つもある。彼がどれだけ努力してきたか少しだけ分かる手だ。
「......怪我しないでね」
「わぁってるよ」
「坊やの血、美味しいから少しでも出血しててもお腹空いてきちゃうの」
「なんだそりゃ、吸いたきゃ吸えやいい」
「駄目よ、坊やは......うちの大事な戦闘員だもの。血が足りなくて倒れたら困るわ」
胸が騒めく。どうも嫌な予感がしてならない。ここで彼が素直にナミを追ってくれれば、その予感は的中しないだろう。
「ドンクリーク！」
誰かが彼等の長の名前を叫ぶ。
ここで呼ばなければ運命が変わっていたか分からない。けど無理だろう。あんなにもオーラを放つ強者を、誰が無視するというのだ。
「......いた」
「誰だあいつら」
「片方は知らねぇ、がもう片方は俺が探し続けた男だ」
鷹の目のミホーク。懸賞金三十五億の賞金首でありながら、どの海賊にも属さず、流浪する男。大きな剣を使い、多くの剣士の上に立つ圧倒的強者。
傍に控えるのは白衣を見に纏った中性的な人物だ。
「初めてね。記憶失ってから同族を見るのは」
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作者名：U・K | 作成日時：2023年9月12日 2時
