吸血鬼娘は日傘をさす3【ONEPIECE】 (ページ7)

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第百一話:それぞれの思惑ページ7

武力とは圧倒的な力と知恵がある事が前提で成り立つものである。

だからドン・クリークのソレは武力だとは到底思えなかった。彼には知恵も力も欠如している。"数"という目に見えるものばかり優先し、中身を理解していない。

中身を重視するルフィとは大違いだ。
東の魔獣と恐れられたゾロに、度胸と頭の回転は確かな狙撃手のウソップ、誰にでも分け隔てなく接するサンジ、強かだけれど目的をこなす能力を備えたナミ。

「...恐らく次の目的地は」
「ん？どうしたんだA」
「いいえなんでもないわよ坊や。それより船は大丈夫？」
「ん、ああナミがいるし最悪あいつらもいるしな、ていうか早く船に戻らない?クリークがくるんだろぉ」

Aは視線をウソップから逸らした後、視線をギンに向けた。顔色が悪いギンはAと視線が会うと、態とらしく逸らす。

「......ねぇギン何か言ってないこと、有るでしょう?」
「......」
「吸血鬼」
「......ッ」

肩が揺れる。ギンの目がまるで迷子の子供の様に漂うのを見て確信した。彼は吸血鬼と会ったことがある。それもグランドラインで。

「ねぇ教えてちょうだい。グランドラインで何があったのか......吸血鬼についても」
「おれは、知らねぇ......ただ、七日目にあった出来事が夢か現実の区別すらつかねぇ......あの男の船に吸血鬼がいたことすら本当かわかんねぇんだ」

ギンはポツポツとグランドラインに入ってからの出来事を騙る。七日目の航海で恐らく鷹の目＿＿＿ジュラキュール・ミホークに襲われ、仲間の一人が彼の船に乗っていた吸血鬼に全身の血を吸われたと。船五十隻、船員五千名が呆気なく海に散った。

「七武海の一人がなぜ......そもそも何故吸血鬼が同船してるのかしら」

ジュラキュール・ミホークは唯一海賊団に属さない海賊だ。世界最強の剣士と謳われる彼が吸血鬼とどういう意図で一緒にいるのだろう。

「......会ってみるしかなさそうね」
「なんだ、Aも鷹の目に用があんのか」
「吸血鬼の方にしか無いわ......ゾロの坊やは......まぁ鷹の目にしか興味無さそうね」
「嗚呼」

確かに世界一の剣豪になると豪語し、あの船長が海賊王の仲間ならそれくらいなってもらわなきゃ困ると言ったのだ。彼が目指すべき目標がミホークでもなんら違和感は無い。

「......」

胸騒ぎがする。ナミのこともゾロのことも。守らなければいけないと本能が駆り立てる。けれどもそれをしたら壊れてしまいそうな気がして、Aは口を噤んだ。