吸血鬼娘は日傘をさす3【ONEPIECE】 (ページ4)

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第九十八話:淑女な幼女ページ4

「あら鴉」

鴎以外を見たのは久方ぶりな気がした。されど確かバギー海賊団との時に見た筈なのでそう昔でもない。歳をとると時間が経つのがどうも一瞬だ。眉間に皺を寄せ、Aは唸った。

「どうしたA？」
「なんでもないわウソップの坊や。それより私店の方に行ってくるわね」

地面を軽やかに蹴ったと思ったAがその細い足のどこに隠しているのかと思うほどの跳躍力を見せつけたあと、羽を出し空を羽ばたいた。羽ばたく音を遠くで聴きながらウソップは小さく息を吐いた。

「吸血鬼なんて存在するんだな」
「まぁ、確かに。噂程度の存在だったしね」

ウソップの言葉にナミが反応する。
吸血鬼という存在が居るとされていたのは知っている。人を愛する種族。嘗てこの世界各国で盛んに活動をして、凡ゆる海で存在していたと言われる種族だ。人を愛し、人に愛される。そんな存在。

種族として人間が多いこの世界では珍しい他種族の存在だ。ここ数百年はなりを潜めていたからか、今のウソップたちの世代で、特にイーストブルーなんて田舎の海では知る人の方が少ないだろう。

「あれだろ、吸血鬼って血を吸うとか言われてっけどホントに吸うのかなぁ」
「Aが誰かの血を吸ってるところなんて見た事ないけど、ねぇゾロあんたは......って寝てるし」

グゥグゥとよく寝る男だ。警戒する必要が無いと判断したとはいえ魔獣と呼ばれた男がこうも簡単に腹を見せるとは。Aがいれば少々小言が入りそうだ。

「そういや、ゾロに懐いてるよなA」
「確かに。一番抱っこせがまれてるしね。犬かなんかだと思われてんじゃない？」
「じゃあ逆じゃねぇのか普通」
「......普通が通じる相手とも思えないけど」
「......確かになぁ」

既に店内へと姿を消したA互いにを思い浮かべる。そこには日傘をさし、お淑やかに裁縫をする淑女な幼女の姿が浮かんだ。

出会ってから少し。誰よりも読めないAの存在は、やはり二人とも気にはしていたのだ。