吸血鬼娘は日傘をさす3【ONEPIECE】 (ページ26)

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第百十八話:理解し難い価値観ページ26

雛鳥が親鳥の元から去る。
それは人間にとっては大したことかもしれないが、吸血鬼にとっては瞬きの間の出来事だ。たいそれた別れとはとても思えず、自分と人間の価値観の違いがわかった。

「ふざけんなクソジジイ！てめぇの作ったスープとこれと、どう違うって言うんだよ言ってみろ」
「俺の作ったもんと」

サンジがゼフの胸ぐらに掴みかかり、声を上げるがゼフはその手を振り払おうとしない。

「自惚れんな！」

ゼフが右手でサンジほ頬を殴る。サンジはその場に伏せ、コックたちは皆ゼフが蹴らずに殴った事に困惑している。

「俺に料理を語るのは10億年早いぞチビナス。俺は世界の海で料理してきた男だぜ」
「......ッくそ」

サンジが飛び出すその後ろ姿を見て、Aは最早呆れの域にまで達してきた。素直に見送ればいいものの、何故そんな遠回しな言い方しかできないのか。

「素直に言えばいいのに」
「あいつは素直に言ったとこで聞くたまじゃねぇよ」
「そういうものなのね」

面倒臭い人たちだ。満足感を覚える程ではないが、美味しい朝食を食べながらAは今後の事を考えた。

ナミのことは、きっとどうにかなる。必ず助けるつもりだ。

それでその後は＿＿＿グランドラインに入るだろう。そうすれば吸血鬼の中将にも会えるはずだ。ルイから借りた本は吸血鬼に関する情報はあるけれど枠でしかない。ピースがなければ完成しないパズルのように、今まで生きてきたAの記憶がない時点で、AはAであると言えない。

「......早く会いたいものね」