吸血鬼娘は日傘をさす3【ONEPIECE】 (ページ25)

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第百十七話:それは愛なのだろうページ25

「あら、起きたのねルフィ」
「おはようA！聞いてくれよ今日で雑用終わったぞ」
「あらおめでとう」

ぎゅうぎゅうと抱きついてきたルフィの背中を優しく叩くとサンジが何やら喚いている。そんな風に騒がしくしていれば、朝食の合図が店内から聞こえてきた。

中に入れば既に全員が朝食にありついており、席はいっぱいであった。元気なものだと改めて感心する。

「おい俺たちの席は」
「メシは？」

Aは日傘を折り畳んで店内に入る。するとコックの一人がAの名前を呼び、近くにあった椅子に座らせた。

「私だけいいのかしら？」
「いいんだよ。お前さんだけでも座らせなきゃサンジの奴がうっせえだろ」
「......ふぅん」

隣に座るゼフがそう呟くので、曖昧に返事をして大人しく席に着いていればコックの一人から給前され礼を述べる。さて、何をするのだろうかと全体を見渡せば、やはりどこか空気が張っているのを感じた。

利口な女なのだAは。船長の為なら、船員の為なら利用するものは利用させてもらうだけだ。

不味い不味いの大合唱を聴きながら食事を嗜む。正直和食が食べたいのだが我儘は言える立場では無いので自重していたら突然声をかけられ、ナイフとフォークを置いた。

「Aさん！」
「どうかしたの？」
「マズイですかそのスープ」
「ごめんなさい、私は吸血鬼で多分人間とは味覚が大なり小なり異なってくると思うから判断しかねないわ......ゼフの方がいい判断をくれるんじゃないかしら？」

ゼフに視線をやれば、呆れた様子で溜息をついた。そして既に空となったを片手に立ち上がる。

「スープ一滴無駄にしちゃならねぇ」

そう言ったゼフの手から皿が滑り降ちる。故意的に落とした皿はやけに音が響いた。視線がゼフに集まり、オーナーと彼を呼ぶ。ただ一人を除いて。

「クソジジイ」

憤慨した、と表現すればいいのかショックを受けていると言えばいいのか分からないがサンジが拳を握ってゼフを見ている。

我ながらパスは上手く渡したとAは思う。ここで互いに言い合って、サンジがはい分かりましたコックの才能がないので止めますなんて言うとは思えない。彼は料理をすることがきっと好きだから。

彼らにとって衝突は愛である。心にも思っていない罵詈雑言も、マズイと言いながら美味しそうに食べるのを我慢する顔も全てがサンジのためなのだ。

「......ホント素直になれないんだから」

その台詞が誰に向けたものかなんて、隣で立つゼフには理解しきったことだろう。