第百十一話:軽い体操 ページ19
「凄いカラクリね」
「ヒレですよ。戦闘時は店に近づけないためにね」
「成程。頭良いわ」
足場があるのなら空中戦で殴る必要は無いだろう。大人しく足と銃で殴ればいい。
なにやらこの船は普通とは違うようだ。面白い。ウソップあたりは心擽られることだろう。
「やっちまえ！」
コックが前線に躍り出る。とてもじゃないが武器と言うには独特な形をしすぎてそちらに視線を取られた。
「餓鬼は大人しく引っ込んでぐはっ」
「誰が餓鬼よ、少なくとも貴方よりかは上よ」
襲いかかってきた男を蹴り飛ばし、海に捨てる。
銃で殴って、足で蹴って、時折飛んで相手を翻弄しながら遊ぶ。
「ふふふ、この調子じゃ簡単なって......あら皆倒れてる」
「てめぇもとっととくたばりやがれ」
「いやよ」
「ぎゃあ!?」
随分遠くに飛ばしてしまったが、生きてはいることだろう。Aは少し強く蹴ったことを反省しながらヒレを見渡した。
「武器を持とうがコックはコック、戦いが専門の俺たちとはレベルが違うんだ」
「まぁレベル差はあるわね」
「ノールックで殴んな!?」
話している人とは別の人間を海に落としながら集団に足を向ける。
「お前らそれでも戦うコックさんか!」
「いやこいつら強え、マジでいままで戦ってきた奴らとは違う」
「その辺の海賊と一緒にすんじゃねぇ俺たちはイーストブルーの覇者クリーク海賊団だ」
「え、嘘。こんなんで覇者になれるの」
「さっきからてめぇはうっせえんだよ！」
「あら失礼」
お淑やかに笑う姿は異質さがある。明らかにこのヒレの中でか弱く見えるのはAのはずなのに、受け手の姿勢を崩さず捌いてみせる。明らかに戦い慣れてる動きだ。されど脅威と判断できないのはやはり容姿が子供らしいからだろう。
「宣言してやれ、その船はもうドン・クリーク海賊団のものになったとな」
「勘違いすんな。店には入れねえよ」
いままで介入する素振りを見せなかったサンジが声を出す。警告のような言葉だ。店を手に入れるつもりならば、それなりの対処をとるという。
Aは銃を腰にかけ直し、ゼフの元へと戻る。
「戦い参加しなくていいのか」
「ええ。それにあの子がどれくらい強いのか知っておきたいもの」
「連れてく気か」
「うちの船長がそういったのだから、勿論。それにいいコックだもの」
「......」
「あら、父親としては複雑かしら」
ゼフは黙りこくったまま船員たちを見て、そのままAに答えようとはしなかった。
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作者名：U・K | 作成日時：2023年9月12日 2時
