第百六話:船長として ページ13
「＿＿＿わかりました。ここで怪我は負いたくないですし、何より貴方を敵に回したくない」
「あらあら、聞き分けがいい子は好きよ」
「好きっなんてそんな軽々しく言うもんじゃないです立場をお考え下さい！！」
顔を真っ赤にして声を上げるルイにAはあんぐりとする。そんなAの表情に気づいていないのか、ルイはすぐさま船の椅子の後ろにある板をあげ、一個の金庫を取り出した。
「門番様なら流出することもないでしょうし、預けますが基本人間には見せてはならない書物ですのでって知ら、ないのか今は。兎に角無くさず、不必要になれば海軍にミホーク宛に送ってください」
革装本のそれは、普段使っている言語の表紙では無い。無いが知っている。読めるのだ。
「【country of twilight】ね」
「それは吸血鬼だけが読める本です。人間が読もうとすると危ないので管理は徹底してください」
「分かったわ......ありがとうルイ」
Aが本をウエストポーチにしまうと、ルイは首を縦に振った。
「それじゃあね」
Aは船から飛び降り、ルフィの元へと帰る。
「終わったのか？」
「ええ。もう平気。予想以上の収穫もあったし」
「そうか、よかったな」
「......それよりも今はゾロの坊やよ」
意識には止めていたが、どうもゾロに余裕がある状況には思えない。当たり前だ。相手は七武海で剣豪としてこの世界で最も知られている人物。経験も技量も、なにもかもがまだ遠いはずだ。
「手は出さない、あれはゾロの戦いだ」
「......そうね。わかってる」
ルフィだって、Aだってゾロのあの姿をジッと見てろと言われている訳では無い。でもそうしないのはゾロの為だ。
「大丈夫よね、坊や」
目を逸らしては行けない。それがこんなにも辛いだなんてAは知らなかった。
顔が強ばる。いますぐにでもあの場に割り込んで、ゾロに一発決め込んでやりたかった。でもそれは許されない。他でもないゾロが。
「＿＿＿何を背負う、強さの果てに何を望む弱き者よ」
「アニキが弱いだと？このバッテンやろう」
「思い知らせてやるその人は」
「やめろ!ヨサク、ジョニー」
歯ぎしりをしながら二人を止めるルフィ。なによりもゾロを思ってる船長だからこその態度だ。
「俺は負けるわけにはいかないんだ」
ゾロの脳裏には何が写っているのだろうか。彼が強くなろうとした理由か、それとも我らが船長なのか。ただそれが彼を引き止める理由になればいいと思った。
彼を失うには、些か早すぎる。
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作者名：U・K | 作成日時：2023年9月12日 2時
