第百五話:不利な局面 ページ12
「坊や」
「ゾロが心配か」
ルフィがじっと見てくる。Aはその問いには答えられなかった。ここで心配だと答えれば、ゾロを信じていないとでも言っているように思えたからだ。
「大丈夫だ、ゾロなら」
「......坊やは」
何故無条件にも信頼出来るのだろうか。
Aが訝しげにルフィを見つめると、ニカッと笑う。太陽と評する笑顔は眩しくてAは日傘でルフィを隠した。
「そうね。それより私はあっちの方に用があるわ」
Aは空を飛び、先程までミホークが乗っていた船におりた。目の前の吸血鬼が目を見開き、一歩下がる。
「ご機嫌ようお嬢さん」
「ご、ご機嫌よう門番様」
「......私の事を知ってるのね」
以前ゾロと出会った村にいた眷属の女性が"管理者様"とAを呼んでいた。彼女は門がAが行方不明後開いたままだと言っていたから恐らく門番と管理者は同意義なのだろう。
「勿論国の英雄様を知らない者などおりませんよ」
「英雄、ね」
恐らく記憶を失う前のAはそれなりに名の知れた存在だろう。英雄、管理者、門番。大層な二つ名を持っている。
ここで下手を打つのは良くないのかもしれない。
「貴方は？」
「え」
「あなたのお名前、なんていうの？」
「ルイ・ダルク、です」
「そう。ルイはあの、ミホークと仲がいいのかしら」
ルイが眉を顰める。不服だと訴えるその顔は仲がいいわけではないと伝えてくる。それが反抗期の子供らしくAは笑ってしまった。
「ミホミホとは、仲がいいとかそういうんじゃなくて利害の一致で一緒にいるだけです」
「利害の一致？」
「......帰りたくなくて。帰るまでの間の暇潰しです」
「ふぅん、そっか」
明らかにルイの表情が陰る。家族仲の問題なのだろうか、それとも友人間、はたまた国でやらかして帰りたくても帰れない状況なのか。
「貴方は責めないのですね」
「何故？」
「......」
「もしかして私関連で何かやらかしたのかしら」
「......まさか門番様記憶」
「あらバレた？」
ここで隠し通すのは無理があるとAは瞬時に悟った。よく良く考えれば何があったかを一つも知らないAはこの局面では不利だ。
「＿＿＿そ、うですか。お身体の方は」
「ピンピンよ......それで記憶を亡くしたと知られたからにはタダじゃ返せないわ」
「何を、お望みで？」
「私に知りたいこと、全てよ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 407人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：U・K | 作成日時：2023年9月12日 2時
