第九十六話:それが普通 ページ2
「美味しい」
Aの言葉にフン、と鼻を鳴らしゼフは腕を組んだ。
今までのAではありえないと断言出来るくらいキラキラと赤い瞳を輝かせていた。童顔に見合う表情を浮かべるAは新鮮なのだろう。対面にいるウソップが驚いたような顔をうかべる。
「＿＿＿サンジ手前はこの店にはもう要らねぇよ」
「ごふっ」
「あ゛ぁ？」
飲んでいた味噌汁が変な所に入り込み、思わずむせる。
しかしそんなAを心配するものはここには居ない。何故ならAの横にいるゼフとナミの横にいるサンジが険悪な雰囲気を醸し出しているからだ。
そういった話なら店の奥でやって欲しい。
折角の料理が不味くなる、と思いながら卵焼きを口に含む。少し塩味を感じるが調度良い。中に入った葱とチーズが口の中で合わさり、風味と食感の相性がマッチしている。
白米も味噌汁も、箸が進んだ。もきゅもきゅという効果音を立てながら食べるAはそっちのけで上二人の口論は熱を持ち始めた。
「おいクソジジイ、おれはこの店の副料理長だぞ。俺が要らないとはどういうこった」
あ、癖になる。
レシピ本が欲しいと味噌汁の中に入っているトウフを柔く咀嚼しながらAは思った。次の目的地に本屋はあるかな？と思考を巡らしていればドンドン二人の男たちの言い合いは加速していく。
強い音がなってAも流石に手を止め、二人も方向へ顔を向けた。
ゼフはいつの間にか横から消え、サンジのもとへと近づいていく。
そのままサンジの胸ぐらを掴み投げた。
「投げたわね」
「あっぶな」
「ひぃい」
「危機一髪ね」
全員が食べ物を抱えて避難する。幸い落ちたものは何も無く机が横倒れただけであった。客達が困惑の声を上げているが定員がだれも謝りに来ないあたりこれが"普通"なのだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 407人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：U・K | 作成日時：2023年9月12日 2時
