吸血鬼娘は日傘をさす 2【ONEPIECE】

第六十三話:出血多量の羊 ページ17

「......無事ね」



カヤの私室にふんわりと若干浮きながら現れるAは、寝息を立てるカヤの頭を撫でた。ひとまずは大丈夫だろう。



「......この匂い」



鼻腔を擽る鉄の匂いにAは顔を上げた。カヤの部屋からではない、もっと下の方からする匂いだ。
固唾を飲み込み、Aは窓を閉める。人の気配を感じないからクラハドールは恐らくこの部屋にはいないだろう。ならば屋敷のどこかにいると考えた方がいい。


「接触は控えるべきね」



ふよふよと足音を立てないようにするため飛びながら下の階へと降りていくA。
明らかに匂いがきつくなる部屋に辿り着くとドアに耳を当てた。中に居るのは一人。呼吸は浅い。



「まさかッ」



ドアを恐る恐る開ければメリーがうつ伏せで倒れていた。



「執事さん！大丈夫、息は」
「......あ、な、たは」



微かに聞こえるメリーの声にひとまずは安心するが、このままでは出血多量で死んでしまう。ポーチから医療道具を取り出し男を仰向けにした。



「仮だけれど出血を止めるわ。痛いけれど我慢してね」
「お、じょ、さ、まが」
「わざわざ計画を頓挫させてまで早めるとは思えないわ。ここでお嬢様をやれば彼の計画が崩れるもの」

第六十四話:お嬢様の夢→←第六十二話:約束は信頼の上で

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す