フロムヘル ページ16
この子どもがなぜいつもこのような痛々しい傷を拵えこんな夜更けに、保護者もなしに人気のない公園で遊んでいるのか、興味が湧かないわけではない。
｢きょうは、ほんをもってきたの。Aが読むから、ちゃんときいてね？｣
｢へぇ、どんなの｣
｢むかし、むかし、あるところに、おうじさまとおひめさまが、おれました｣
｢おりました｣
｢おり、ました！｣
午後八時四十五分。公衆電話から漏れる灯りだけが照らす星一つない夜の闇の中で、Aが舌っ足らずな声で語りだす。
まだ子どもが帰る様子はなかった。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
｢…遅い！｣
その日Aは公園に現れなかった。1日程度なら間が開くこともまああったので気にしなかったけど、3日経っても現れない。俺にしては待ったほうだろう。
ずっとこの場所に留まっているのにも飽きた。そもそもなんでこんな場所に、Aにもこだわっているのかわからない。あんなガキの相手をするより、もっとやってみたいことや試したいことはあるのに。
｢…｣
頭では理解していた。それでも真人の足は自然と、Aの体にこびり付いていた呪力の残穢を辿っていた。
辿り着いた場所は古びた1軒のアパートだった。外壁はところどころひび割れ黒ずんでいるし、薄い屋根はちょっと強い風が吹けば飛んでいってしまいそうなほど頼りない。老朽化した鉄骨階段は一段だけ真ん中に穴が空き、地面から生えた元気な雑草が顔を出している。本当にここに人が住めるのかと疑いたくなるが、"入居者募集中"と書かれた看板を見るに、一応人はいるのだろう。
2階へ上がる階段。それを登りきった丁度一つ目のドア、マッキーで雑に"アサガミ"と手書きされた表札が目に入る。苗字はAから訊いたことはなかったが、中からいつもAに纏わりついた呪力の気配がするので、きっとここが彼女の家だ。
心の準備など必要ない。ただ会って話すだけだ。あいつの顔を見て、もうお前の顔は見飽きたし興味もないから二度と会わないと言ってやる。また一人きりであの誰もいない公園で遊べばいい。呪力の強い俺が側にいたから何も寄ってこなかっただけだ。アレはよくないものを寄せ付ける。今はまだ小さいからいい、だが歳を重ねるにつれAの身に宿った呪縛はどんどんデカくなる。そうして最後には呪いに侵され死んでいくのだ。
鍵がかかっていれば扉ごと蹴破ってやろうと思っていた。
壊れかけのドアノブは、驚くほど素直に回ってくれた。
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まめ(プロフ) - marymarimomaryさん» めちゃくちゃお恥ずかしいです…別で保存してる分は修正したのでこっちも修正した気になってましたとても恥ずかしいです報告と応援ありがとうございます (2019年10月7日 7時) (
レス) id: 3642bc1b71 (このIDを非表示/違反報告)
marymarimomary(プロフ) - 写真家はレイピアではなくサーベルです。更新がんばってください (2019年10月6日 19時) (レス) id: c23eaa7cd9 (このIDを非表示/違反報告)
シナ(プロフ) - 夕美さん» すみません、忘れてました。ご指摘ありがとうございます。 (2019年1月22日 21時) (レス) id: 43e26c0f2f (このIDを非表示/違反報告)
夕美 - オリジナルフラグちゃんと外して下さい、違反です。ルールくらい確認しましょう。 (2019年1月22日 21時) (レス) id: 42f7d9fc87 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まめ | 作成日時：2019年1月22日 21時
