誤解は解けても ページ15
………………
「…おのれエンマめ………!」
現在、目の前で喧嘩が勃発している状況である。
双方から多分誰も近寄れないほどの圧を感じる。止められる術は…いや、なさそうだ。
目の前で喧嘩が始まるほど困るものはない。言ってしまえば見苦しい。邪魔。
…他所でやってくれないか、女装コンテストなんて。
「おー似合ってるぞカイラ。」
「……何故私がこんな格好をしなくてはいけないのだ…!!他にも方法はあっただろう?!」
「いやあ完全に敵と思われてるだろうと思ってな!コレならきっと緊張も溶け」
「そんな訳ないだろう貴様!!」
聞いている限り、どうやら私の緊張を解こうとしたらしい。
今目的を聞けたので多少緊張は溶けたものの、この光景、普通に見てるといい年した男二人が女物のフリフリなワンピースを着て目の前で喧嘩しているという怪しさ抜群な状況であることに変わりはない。
カイラ、という中性的な顔立ちをした青い髪の青年は、スカート丈の長いメイド服らしき服を身につけていて、多分言い出しっぺであるエンマ…健康的な肌色の青年はチャイナ服…のようだが、下半身はスカートだ。
そんなもの、どこで買うんだか…
「……似合ってるわよ。」と半分本心で言ってあげると、カイラは顔を更に赤らめ、耐えられなくなったのか「…もう着替えるぞ!!」と怒りながら乱暴に扉を開けてどこかへと去ってしまった。
あれが成人男性の普通の反応である。
「あー…怒らせちゃったか…」
「恥ずかしくないの、その格好。」
「まあ恥ずかしいは恥ずかしいが、これくらいやらないと誤解は解けないと思ってな。苦手だったらごめんな。」
少し間を開けて、「いいえ」と返す。
苦手ではない。むしろ、良いと思う。
好きなことを思い切りやれるのは悪くない。
恥ずかしさをふっ飛ばすくらいのやる気もあって良いのではないか。
「それと_______誤解、とは一体…」
そう聞くと、エンマは驚いたかのように目を見開いた。
一緒真顔になったかと思えばすぐに笑顔になる。
「ああ、それはな、まだ敵だと認識されてるとおもってだんだが…」
「………さあ……どうでしょ。私にも、分からないわ。」
…わからない。
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作者名:柚子茶々 | 作成日時:2020年5月5日 10時