彼女の愛 ページ13
「Aは、愛って何だと思う?」
急な質問。話の脈絡は分からなかったけど、とりあえず思っていることを口に出した。
『誰かのために、自分を顧みない事、かな。』
「せやんな。あん時のお前もそう言っとったわ!」
そして、そん時の俺はお前が言ってきたその問いに対する答えを持ち合わせて無かったんや。
そう言ってシッマは笑った。いつもとは違う、苦しそうな笑み。なんとかしてあげたかったけど、それをするのは死んだ私じゃない気がして。
黙って見ていることしか出来ない自分に腹が立った。
「あんときなぁ、そんな問題持ちかけてきた矢先に俺にトラックが突っ込んで来たんや。勿論歩道歩いてたよ?暴走トラックってやつやな。そんで、俺を庇ったAが代わりに轢かれて、後はまぁ。想像の通りや。」
『しっま、』
「でもな、同時にそれがお前の思う『愛』なんやなって思った。Aが血を流してる瞬間も涙ひとつ流さんで考えてた。」
『やめて…』
「冷たいやっちゃろ?でもな、そうする事しか出来なかってん。目の前の非現実的な事象に対して、それしか考えられんかった。人間、突発的な事が起こるとやっぱ合理的な判断って下せへんもんやなって。」
『やめてよ!!!』
それ以上、苦しそうな顔を見たくはなかった。つとめて明るい口調で話すシッマを、じわじわと自らの首を締めていくシッマを見たくなかった。
「…いい機会や、お前に聞くわ。お前の愛は誰かを救えたんか?」
『え…』
「確かに命は助かった。けどな…いや、辞めとくわ。」
困惑する私を置き去りにして話は進んでいく。
シッマはそこで一旦区切って次の話を始めた。
「お前が居なくなってからなぁ…。まー辛かったよ!だってずっと隣にいた奴が居らんねんで?嫌でも違和感感じるわ!」
『…ごめん。』
「ええねん。Aも自分の信念貫き通した結果やったからな。でも、俺の世界は気づかんうちに色を失っていった。」
普段のシッマからは想像もできない言葉。
正直、誰がいたって消えたって変わらない人だと思っていたから。心が無いと皆に言われ続けている彼の口から出るにはあまりに意外なものだった。
「そらもう酷かったよ。部屋も荒れてたやろ?飯も食わん日が増えたし、何より仕事以外で外に出なくなったな!」
なんで私なんかの為に、そんな
「そしてあの日、インターホンの前で座って眠っとるお前を見つけたんや。」
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紗音(プロフ) - ゼロさん» コメントありがとうございます!そこに関しては読者様のご想像にお任せ…というつもりでしたが私の中では「お前は消えてくれるなよ」と言わせてました!これからも頑張ります〜!! (2020年8月10日 1時) (レス) id: 49310bd778 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ(プロフ) - 質問なんですが、最後の番外編の夢主が聞き取れなかったknさんの言った言葉がすごい気になってしまって、色んな言葉が当てはまるので、もし決めてあれば教えていただきたいです! (2020年8月10日 1時) (レス) id: f5adb14e6d (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ(プロフ) - ギャアアアア素敵な神作品ありがとうございます!まじ感動…knさん…心あるやないか!(似非) これからも頑張ってくださいいい!!(質問があるので続きます) (2020年8月10日 1時) (レス) id: f5adb14e6d (このIDを非表示/違反報告)
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